ついに1500ドル(1トロイオンス=約31.1035グラム当たり)の大台を突破した金の価格(ニューヨーク先物)は、5月2日に1570ドルを超えた後、100ドル超の急落を見せたが、再び1500ドル台まで反発するなど荒っぽい値動きを繰り返している。今後の金価格はどうなるのか、ワールドゴールドカウンシルの日韓地域代表、豊島逸夫氏が占う。
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金価格は乱高下しているとはいえ下値は限定的で、底堅い展開であることに変わりはない。
最近、私の予想も上値はほぼ当たるのだが、下値は想定した水準よりも100~200ドル手前で止まることが少なくない。われわれプロでも想像し得ないほど下がりにくい相場となっているのだ。
その理由は、まず中国を中心とした新興国の個人投資家が買いに走っていることが挙げられる。特に中国ではインフレ率が銀行預金の金利を上回っているため、「銀行に預けておくよりも安心」といった思惑から個人の金買いが進んでいる。
加えて、公的部門の金購入も目立つ。たとえばメキシコ中央銀行が今年1~3月期に93トンもの金を購入していたことがIMF(国際通貨基金)統計で明らかになった。米国の隣国であるメキシコが米ドルを売って金を買うということ自体、驚きを禁じえないが、それだけドルの不信感が高まり、拡散しているということにほかならないのだろう。
さらに、こうした「ドル売り→金買い」の波は米国内にも及び、テキサスの大学年金基金が先物で運用していた20トンもの金を現物で引き取ると表明。もはや米ドルに対する不信感は自国内にまで波及し、今までのマーケットの常識では考えられない厚みを持って金が買い支えられている構図なのである。
だから下がりにくいうえに、このような上昇気流に乗ろうと、ヘッジファンドのような投機マネーも次々と参戦。無論、その資金は1週間で出入りを繰り返すような短期勝負であるため、短期的な乱高下を繰り返す波乱要因となっているが、それでも金相場は一進一退を繰り広げつつ、着実に下値を切り上げる方向で上昇トレンドを描いている。
※マネーポスト2011年7月号