名古屋場所(7月10日初日)の通常開催を決め、日本相撲協会は胸をなで下ろしている。しかし、まだ協会上層部が頭を悩ませる問題が残っているという。元大関・琴光喜(本名・田宮啓司)との係争である。
野球賭博に関与したとして昨年7月に解雇された琴光喜は、角界での地位回復を求めて協会と係争中。6日に行なわれた第1回の口頭弁論では、琴光喜側が「協会が“関与を認めれば厳重注意で済ませる”といったのに、実際は解雇処分になった」と主張。他の関係者に比べ処分が重かったことから、「解雇は平等性を欠く」と訴えた。さらに琴光喜の担当弁護士は、「騙されたということ。ウソをついてはいけない」と協会を厳しく批判した。
だが、協会が怯えている理由は琴光喜の地位云々ではない。ある若手親方が語る。
「琴光喜は協会の弱みを握っている。彼は現役時代、年寄株・秀ノ山の取得のために高額な手付金を支払っている。領収書のないカネだけに扱いが難しいが、これは特に今、協会にとって公表されたくない暗部の一つだ」
年寄株の高額取引と、それに伴う脱税疑惑は、本誌が30年の角界追及で批判し続けてきた最大の暗部だ。
「6月1日に協会が文科省に提出した組織変革の工程表では、この年寄株の売買問題は棚上げされたまま。文科省は改革を強く求めたが、自分たちが高値(裏金)で購入した年寄株の価値を守りたい親方衆が猛反発し、議論は平行線を辿っている」(相撲担当記者)
琴光喜が売買の実態を暴露しようものなら、本場所開催も角界改革も白紙に戻る。琴光喜はこれを裁判の中で“取引材料”にする目論見があるという。琴光喜は現在も断髪せず、ポニーテール姿でジムに通って体を鍛えるなど、復帰に意欲満々の様子。また、
「これだけ土俵から長く離れてしまうと、現役としての復帰は厳しい。それよりも親方として協会へ復帰する狙いだろう」(前出の親方)との見方もある。協会と琴光喜の土俵際での投げの打ち合い、こちらは文句なくガチンコになっている。
※週刊ポスト2011年6月24日号