開幕まで100日を切ったラグビーW杯。9月9日の対フランス戦を皮切りに、日本代表の1次リーグの戦いがスタートする。
日本は「最低2勝」を目標に掲げているが、同じグループにはとんでもない難敵が立ちふさがっている。開催国であり世界ランキング1位、“オールブラックス”の愛称で知られるニュージーランドだ。同月16日に対戦予定だが、実はこの試合、ラグビーファンの間では「悪夢の再来か」と囁かれているのである。ラグビーに詳しいスポーツライターがいう。
「日本はかつて、1995年の第3回大会で、ニュージーランド相手に145対17という屈辱的なスコアで大敗しているんです。これはW杯ワースト記録となる大差でした。両国の間には高校生と社会人以上の実力差があるため、本来であればニュージーランドが“手を抜く”可能性もあるが、今回はそうはならない。というのも両国ともにベストを尽くさねばならない理由があるからです」
それは両国に共通する「地震」だ。今年はニュージーランドと日本が共に大震災に見舞われ、様々な形で双方が支援しあった。元ラグビー日本代表で解説者の大八木淳史氏がいう。
「自国開催ということもあり、復興の象徴となるためにもニュージーランドは全力を尽くしてくるでしょう。日本は元来の走り勝つラグビーに立ち返って対抗するしかない。意外かもしれませんが、実は相手が1軍メンバーでなく控え選手を出してきた時が一番怖い。ケガが怖い1軍よりも、首脳陣にアピールしたい控えの方が格下の日本相手でもガムシャラに挑んでくる。1995年の悪夢の敗北も、まさに控え選手が相手だった」
どんな専門家に聞いても、実力差は歴然。しかし、わが日本としてはただ漫然と敗れるわけにはいかないだろう。ラグビーライターの向風見也氏に日本の勝機を探ってもらった。
「私は3人の選手に注目しています。まずロックの大野均。愚直なまでに相手を潰しにいく彼のプレーは玄人好みだが、きっと攻守逆転の重要なポイントになる。そしてスクラムハーフの田中史朗。ニュージーランド戦では必然的に守備の時間が長くなるので、彼が司令塔として機能するかが重要です。あとは山田章仁選手。ボールを持っていない時の動きが非常にクレバーです」
たとえ無謀な勝負といわれても、日本男児なら一矢報いたい。
※週刊ポスト2011年6月24日号