ライフ

森永卓郎氏 最近の「節電強要圧力」に日本人の極端さ感じる

 脱原発の声が高まってはいるが、実際原発全廃に踏み切れば、一体どういうことが起きるのか。日本経済に深刻なダメージを与えかねないと獨協大学教授の森永卓郎氏は指摘する。

 * * *
 日本の電気代はただでさえ高いのに、原発全廃でさらに高騰すれば、製造業は国際競争力を失い、国内に踏みとどまっていた工場の海外移転が加速する。

 失業率が上昇し、下請けの中小企業は倒産し、日本経済は坂道を転がり落ちていく。日本人全員がエアコンもパソコンもなかった昭和30年代の暮らしをする覚悟ができているなら構わない。

 それは牧歌的でもなんでもなく、貧困や不衛生、暗い街では治安も悪化するだろう。そんななかで暮らすということだ。

 何かあると極端に振れるのが日本人の悪いクセだ。今までどれほど原発のメリットを享受してきたかに気づかず、いきなり全否定に回ってしまう。

 最近の「節電を強要する同調圧力」にも日本人の極端さが感じられる。電気は貯められないので、電力需給がひっ迫する時間帯でなければ節電する意味はないのだが、「節電しなければ非国民」のような雰囲気が蔓延している。

 自宅近くのコンビニには、「蛍光灯をLEDに切り替えて節電をしています」と貼り紙がされていた。他店より店内が明るいと「節電しろ」とクレームが来るので、わざわざこんな貼り紙をしているのである。

 計画停電以降も、鉄道のなかには駅のエスカレーターを止めて、電灯を減らしたままにしているところが多い。

 先日、軽度の視覚障害の方と話をする機会があり、その方は周囲が明るければうっすら見えるぐらいなのだが、「駅のホームが見えなくて怖い」と言っていた。

 足の弱っているお年寄りや妊婦の方などは、エスカレーターがないと本当に上り下りが辛い。「階段を上ったほうが健康にいい」などというのは“強者の論理”で、常にしわ寄せは弱者に向かうのである。

 善くも悪しくも民主党は“生活者視点”に立っていることが特徴だったはずだが、それすらも失われ、弱者をいじめる政治に転換した。 竹中平蔵氏でさえ「今は消費税増税すべきではない」というほどだが、菅首相は増税をぶち上げ、子ども手当も高速道路無料化も反故にした。

 わざと国民いじめをやっているかのように見えるほどで、これはホストが女性客に貢がせるのと同じ手口だ。

 ホストは女性客にまずタバコを1箱買わせ、そのハードルを越えれば時計にクルマにマンションと、要求をエスカレートさせていく。痛みや苦しみを与えられた女性は逆に虜になるという。節電に増税と、国民に次々に苦しみを与えて、依存させようとしているのだ。
 
 ※SAPIO 2011年6月29日号


関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン