高齢者や震災後不安を抱える人の資産が狙われている。弁護士の紀藤正樹氏が最新の手口を明かす。
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東日本大震災により多くの方が大変な被害を被ったが、震災で生じた不安や混乱に乗じて、詐欺集団が活発に動いている。特に最近急激に被害が増えている外貨を巡る詐欺には要注意だ。
昨年9月、都内在住の主婦(71歳)の自宅にあるダイレクトメール(DM)が届いた。同封されていたのは、「進み始めた多様性の国、スーダン共和国」という見出しが躍るカラーのパンフレット。
写真とグラフをふんだんに用いて、「秘められた可能性、埋蔵資源+農業」「期待される経済の発展」などの文面で遠く離れたスーダンの魅力と将来性を紹介する内容だった。
DMが届いたのとほぼ同時期に発送元のA社から、「1口50スーダンポンドが15万円。いまなら15口限定で、2か月後に7倍以上になります」とスーダンの通貨・スーダンポンドの購入を勧める電話があった。
さらに同じ日に別のB社から電話があり、「パンフレットは届きましたか。A社からスーダンポンドを購入すると、のちにわが社が高く買い取ります」と持ちかけられた。
続け様の甘い囁きに負けた主婦が15万円で1口購入すると、すぐB社から「まだ買えるかA社に聞いてください。もう1口買ってもらえると高く引き取ります」と連絡があった。
「すごい人気だ。早くしないと」と焦った主婦は、さらに15万円を振り込んで2口目を購入。その後も「15口買ってくれたら225万円になります」「500万円以上出資すると特別会員になります」と執拗な勧誘が続き、最終的に生命保険を解約して445万円分も見知らぬ国の通貨を買ってしまった。
しかし、その後A社、B社とも連絡が取れなくなった。業者所在地はもぬけのからで、主婦はようやく騙されていたことに気づいた。同居する夫にはまだ言い出せずにいる。
これは、東京弁護士会の山内隆弁護士に寄せられた実際の相談例だ。現在、同様の外国通貨をめぐる詐欺商法に遭う被害が増えている。
※SAPIO 2011年6月29日号