〈このたびの福島第一原子力発電所の事故により、お客さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることを、心より深くお詫び申し上げます〉
これはいわゆる詫び状ではない。東京電力が電気料金の支払いを遅滞している利用者に宛てた電気料金の請求書に含まれる一節、である。いまや東電は未払い顧客に対してまで平身低頭しなければならないほど萎縮している。
そんな東電を尻目に、ここにきて勢いを増しているのが東京ガスである。
同社では、各家庭のガス機器の保安点検や検針、営業活動などを一手に担う地域会社「東京ガスライフバル」をエリア毎に展開している。東京西部エリアの営業マンは興奮気味に話す。
「震災後、『エネファーム』の問い合わせが殺到し、正直、生産が追いつかないほど。3月末に申し込んだお客さまにもようやく5月に導入できたくらい。いま申し込んでも、1~2か月待ちは覚悟していただかないといけない状況なんです」
東京ガスをはじめガス各社で販売する「エネファーム」とは、都市ガスやLPガスなどから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて発電する仕組みの家庭用燃料電池で、発電時に発生する排熱を給湯や暖房にも回せるシステムだ(1階屋外にスペースが確保できる戸建て住宅のみ設置可能)。それゆえ価格も決して安くはない。
2009年5月の発売当初は346万5000円、現行機種でも276万1500円。国の補助金制度で最大105万円までの補助金が受けられるようになっているが、値引きなどを考慮しても自己負担額は150万円程度にのぼる。にもかかわらず、原発事故がもたらした電力不足に対する不安から引き合いが相次ぎ、東京ガス本社でも「問い合わせは震災前の10倍くらいまで増えた」(同社広報部)という。
※週刊ポスト2011年7月1日号