東京都千代田区富士見にある本部の土地建物がいよいよ競売にかけられようとしているなど、朝鮮総連が瓦解しつつある中、在日朝鮮人の間では、金正日に対する崇拝も急速にしぼんできている。ジャーナリストの野村旗守氏が報告する。
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「朝鮮総連のドン」として在日朝鮮人社会に君臨し、日本政界や治安当局からも一目置かれていた許宗萬責任副議長に、もはや昔日の面影はない。元総連中央関係者はこう話す。
「近頃の総連では、衆人環視の中で面と向かって許宗萬に喧嘩をふっかける若い猛者もいるという。ひと昔前には絶対にあり得なかったことだ。北朝鮮本国に対する熱もすっかり冷めている。3月の終わり、総連中央では『将軍様からの(震災)慰問金に感謝する在日同胞中央大会』が開かれたが、一体何に感謝しろというのか。
金正日が日本赤十字に送ってきた10万ドル(約800万円)なんていうのは、韓国の芸能人1人にも及ばない。『恥ずかしいからやめてくれ』と同胞たちは口を揃えている。同胞被災者に送ってきたという50万ドル(約4000万円)が本当だったとしても、果たして被災者の元に届くかどうかもわからない。『また中央の幹部連中が借金の穴埋めにでも使ってしまうだろう』なんていう観測がもっぱらだ」
朝鮮総連としては、中央会館死守の最後の望みを、再三にわたって駆使してきた政界工作に賭けるしかないようだ。最近では、朝鮮総連の日本政界を担当する部署である国際局(許宗萬責任副議長もここの出身であり、数多くの政治家を手玉にとってきたと言われる)の幹部たちが永田町の議員会館を足繁く訪れている姿が複数の関係者によって目撃されている。
いずれにせよ、現在の総連には大胆な政界工作を仕掛ける材料もなければ、資金もない。中央本部では会館競売の強制執行を見通し、すでに文京区にある朝鮮出版会館ビルのワンフロアを空けて本部機能の移転の準備を進めているというが、最高裁判決がくだれば現在爆発寸前まできている許宗萬執行部に対する憤激が一気に表出し、組織解体に向けて拍車をかけるだろうことは想像に難くない。
※SAPIO 2011年6月29日号