歯を失ったり、歯周病の進行で萎縮した歯槽骨に人工歯根を埋入するインプラント治療を希望する人が増えているが、残った歯槽骨が少ないために断念したり、全身麻酔で腰の骨を移植するなど患者への負担も大きい。骨再生治療は、自身の骨髄液から採取した細胞を増やし、人工の骨補填剤と混ぜて歯肉の中に留置する方法で、実施後4~6か月で骨が再生する。
歯は虫歯や外傷、歯の土台である歯槽骨の組織が破壊される歯周病などで失われる。従来は義歯で対応することが多かったが、近年、咀嚼力が高いインプラント(人工歯根)治療を希望する人が増えている。しかし、歯槽骨が少ないために治療を断念したり、腰の骨を取って移植するなど患者にとって負担も大きかった。
東京大学医科学研究所先端医療研究センターの各務秀明特任准教授に話を聞いた。
「インプラント治療のために腰の骨を移植する場合、全身麻酔で2~3週間の入院が必要です。しかも、退院してからもしばらくは歩きにくく、傷も残るなど、患者の満足度が高くありませんでした。そこで自身の骨髄液から採取した細胞を用いた、骨再生治療の研究がはじまりました」
骨髄液の中に、骨を作ることができる骨髄間質細胞があることは40年ほど前にわかっており、約10年前からそれを使った再生医療の研究がはじまった。そして、医科学研究所附属病院では平成16~21年までに8例を対象に、臨床研究が行なわれた。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2011年7月1日号