紛争当事国の国民ではないのに、金銭で雇われ、戦場に繰り出す傭兵たち。祖国を離れて戦う彼ら傭兵たちの日常はどんなものか。ジャーナリストの宮下洋一が解説する。
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傭兵はあちこちの国にいるが、そのすべてが独裁者や王族に雇われているというわけではない。たとえば、カダフィが参考にしたフランスの外人部隊は、世界の屈強な男たちが集まった精鋭部隊として知られている。
今はフランス陸軍の傘下にある正規軍で、厳密には傭兵とは言えないが、古くはクリミア戦争、スーダン遠征、第1次世界大戦、最近では湾岸戦争からコソボやコートジボワールやアフガニスタンなどで活動を繰り広げてきた。
隊員数は7768人で、世界146か国の外国人から構成されている(2010年現在)。8連隊、1准旅団、1分遣隊からなり、人種・言語・宗教を問わず、やる気のある者なら誰でも入隊できる。
2005年5月、民間軍事会社「ハートセキュリティー」の一員としてイラクで殺害された斎藤昭彦氏(当時44歳)も、外人部隊でもっとも尊敬された日本人上級特務曹長だった。
フランスでレジオネールと言われる隊員たちは、過酷な訓練に明け暮れる毎日をすごしているが、食事は充実している。世界の軍隊の中でもっともメニューが豊富で美味しいと言われ、豚肉とジャガイモのクリームソースあえや、フォアグラやパテといった一品料理に、昔はラム酒やウイスキーを携帯ボトルで持ち歩いていた。戦場でも酒やタバコを欠かさない。
隊員たちの性的欲求の処理はさまざまだが、部隊によっては宿舎の周辺に外人部隊目当ての女が集まっていたり、ジャングルや砂漠地帯での訓練時に、特定の場所に女がいて、売春が行なわれていたりもするようだ。もちろん相応の金がかかる。
月給は、1等兵で1000ユーロ(約12万円)、下士官で1500ユーロ(約18万円)程度、士官で2000ユーロ(約24万円)以上。それをタバコに費やす兵士もいれば、女や酒につぎ込む兵士もいる。コツコツと貯金し、宿舎からアパートに移り住む者もいる。
外人部隊は現在でも紛争地域の前線に立ち、アフガニスタンやリビアでも高度な任務を果たしている。
傭兵は売春とともに世界最古の職業と言われ、その起源は紀元前まで遡る。以来、戦争の“主役”を担ってきたが、近代国家が成立した19世紀以降は、各国で徴兵制や志願制による国民軍が創設され、傭兵は一般的ではなくなった。
それでも世界に紛争があるかぎり、傭兵の姿が戦場からなくなることはない。彼らは今日も砲弾の下をかいくぐり、まさに命がけの毎日を送っている。
※SAPIO 2011年6月29日号