米国の金融緩和策を背景に発生した大量の余剰マネーの流出入が原油価格などを乱高下させ、コモディティ(商品)相場を騒がせている。商品市場の今後をBRICs経済研究所代表の門倉貴史氏が解説する。
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長期的な視野でみれば、有力新興国の台頭による需要増加という構造的な要因によって、原油、穀物、金などの国際商品価格は全般的に上がっていく流れにあるとみる。しかし、各商品市場の規模はそれほど大きくないため、一気に投機マネーが流れ込んだり、流れ出たりすると、値動きがかなり激しくなるので要注意だ。
特に現在のような先行き不透明な世界経済情勢のもとでは、少しでも有利な投資先やリスク回避先を見つけると、市場にあふれたマネーが集団的に同じ方向に移動してしまう。ちょっとした材料でも即座に商品価格は反応するのだ。価格が上がるような材料が出れば、オーバーシュート気味に上昇していき、逆に下がるような材料が出れば著しく急落する。
原油価格が今年に入ってから1バレル=100ドル付近の高値へと上昇してきた理由として、【1】中国やインドなどの有力新興国での原油の消費の増加、【2】米国の量的金融緩和第2弾(QE2)による余剰マネーの原油先物市場への流入、【3】産油国である中東・北アフリカ地域の政変・政情不安による原油の供給不安の高まり、の3つの要因の重なり合いが指摘できる。
供給面で今後のカギを握るのはサウジアラビアにまで政変、民主化要求のデモが広がるかどうかだが、個人的にはその心配はないとみている。緊迫するリビア情勢が落ち着いてくれば、高騰気味の原油価格もある程度、調整してくるのではないか。
大豆やトウモロコシ、砂糖、コーヒーなどの市場でも全般的に価格が上昇している。個別でみると、供給国の天候不順や一時的な生産の滞りなどが材料になっているだけで、決して在庫が底をつきそうなわけではない。
小麦価格も高騰している。昨年の猛暑の影響でロシアでは小麦がほとんど収穫できず、さらに豪州など他の小麦輸出国が異常気象の打撃を受けた。需給が逼迫していることは確かだが、そこに投機的な思惑を抱いた余剰マネーが流れ込み、より増幅されている部分がある。
このほか、原油価格の上昇を受け、バイオ燃料などの需要も高まっている。ブラジルでは、バイオエタノールの原料になるサトウキビが不足し、食料用を燃料用に回す事態にもなっているという。
※マネーポスト2011年7月号