「大人に必要なことはすべてニュースから学べる」。コラムニストで『大人力検定』などの著書がある石原壮一郎氏がお届けする今回のテーマは、「国王の下半身スキャンダル」に学ぶ、大人の作法を身につけるコツだ。
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「スウェーデン」という国名は、40代以上の男性にとって特別な響きを持っています。中学生のころ男友達と学校の帰り道などで、競うように勝手な妄想をふくらませたものです。
そんな青春の甘酸っぱさを感じさせてくれる国で、なんともスケールのでかい下半身スキャンダルが勃発しました。なんとスウェーデンでいちばん偉いカール16世グスタフ国王(65)が、風俗店に出入りしていた疑惑が浮上。おまけに、友人が証拠写真を風俗店経営者から買い取ろうとしていたことまで発覚したのです。
報道によると、友人とスウェーデンの首都ストックホルムにある「いかがわしい会員制ナイトクラブ」に行って肌を露出した女性たちと楽しんだり、海外を訪問中に現地の「高級ストリップクラブ」を訪れたりしたとか。それぞれ、どういうところでどういうサービスをしてくれるのか激しく興味をそそりますが、ま、そこは本題ではありません。
着目したいのは通信社の世論調査の結果。スキャンダル発覚後にもかかわらず、半数近くの44%が国王が王位に留まるべきだと答えていて、ビクトリア王女に王位を継承すべきだという意見はわずか17%でした。
これがもし日本で、たとえば菅直人首相が同じようなスキャンダルを起こしたとしたら、こんなにあたたかい目で見てはもらえないでしょう。
そもそも多くの男性は、その手のお店と無縁の人生を送っているわけではありません。ちょっと行ってみたかったり、付き合いでしょうがなかったりするのは、きっと下々のものも国王も同じ。スウェーデン国民の大らかな反応は、最近の日本人が忘れている大切な何かを教えてくれていると言えるでしょう。
政治家や有名人のアラ探しに精を出して、目先の溜飲を下げたりセコイ優越感を覚えたりしていないで、多少のことは大らかに「しょうがないなあ」と許すことで大人の快感にひたりたいものです。
たとえば上司の不倫スキャンダルが発覚したときも、陰で酒の肴にしたり、腫物を扱うようにその話題を避けたりするのは感心しません。あえて「いやあ、課長やりますねえ。あやかりたいですよ」ぐらいのことを言って、窮地にある相手をホッとさせつつ連帯感を覚えてしまうのが、大人としての貪欲な対応。そのほうが、より深い快感を味わえるし、絆が深まってかわいがってもらえるという実利も期待できます。
だいたい国王がこういうスキャンダルで国民に話題を提供すること自体、スウェーデンという国の懐の深さや住み心地の良さを表わしていると言えるでしょう。微妙に方向性は違いますが、かつて抱いたピュア憧れは間違っていませんでした。ありがとう、スウェーデン!