駅弁の老舗・崎陽軒が6月10日に発売を開始した「シウマイ」が入らない弁当「おべんとう魚」(670円)の売れ行きが好調だ。しかし、開発に至るまでには侃々諤々の議論が発生。特に営業担当者たちの反対は凄まじかった。東京事業部の石川勝裕・課長代理が振り返る。
「企画段階で“シウマイを入れなくていいのか”という意見が多数出ていましたし、販売店の中には、“シウマイがない崎陽軒の弁当なんていらない”と、受け入れを拒む声もありました。営業的に難しいと思い、私は“絶対に売れない。やめるべきだ”と進言しました」
しかし開発サイドも引き下がらない。「崎陽軒は弁当のプロだ。シウマイがなくてもうまい弁当は作れる」と反論して昨年12月に商品化に着手し、何度も試作を重ねていった。
実は当の開発担当者たちにも逡巡があったという。「おべんとう魚」の産みの親である新製品開発室の吉川里奈氏が語る。
「役員会でのプレゼンのために作った最初の試作品は、シウマイ抜きで作るというコンセプトだったはずなのに、なぜか日和ってシウマイを入れてしまったんです。その後も10回以上試作品を作りましたが、抜いては入れるという“一進一退”を繰り返しました。やはり、シウマイは当社の魂だと思い知らされました(笑い)」
役員会でもシウマイ論争は繰り広げられた。議論は白熱し、最終的に「魚がテーマなんだから、シウマイを入れないことにこだわろう」との結論に落ち着いたのだという。結果は冒頭の通り、大成功の滑り出しとなった。
「弁当の新製品は1日500食売れれば大ヒットといわれますが、『おべんとう魚』は午前中の販売だけで250食が売れる。現在は製造ラインの関係でこれ以上作れませんが、今後は徐々に増産していく予定です」(石川氏)
※週刊ポスト2011年7月8日号