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世界遺産登録・平泉の歴史 未完のまま潰えた聖地創造の営み

平泉・中尊寺本堂に続く表参道周辺

西暦850年、この地を訪れた慈覚大師円仁が中尊寺と毛越寺を開山してから1161年を経た今、平泉の地が世界遺産に登録された。

中尊寺開山から約250年後の平安時代後期、現在の岩手県奥州市に本拠地を持った藤原清衡を中心とした奥州藤原氏が拠点を平泉に移し、中尊寺の諸堂造営に着手、多宝寺、大長寿院など次々に大伽藍を完成させ一大仏教都市を築き上げた。

平泉は当時は、関東の最北端だった白河関から北に約250km、朝廷のあった京都からはるかに離れた「東山道の奥」の地であったものの、東北における地理、政治、精神の中心で、また仏教の中心でもあった。

中尊寺をはじめとして、周辺には浄土式庭園を誇る毛越寺など、都に劣らない寺院が創建され、多くの僧侶たちがこの地に集った。しかも仏像や伽藍には金が施され「皆金色」と人々は評し、その世界はこの世の浄土そのものの風景であった。聖地創造の営みは、藤原氏の滅亡と共に未完のまま100年で潰えてしまった。

長い歳月により風化はしても、大地と地元に暮らす人々はもちろんのこと、世界遺産登録を機に訪れる観光客に、平泉の地は、浄土の風と慈悲の心を与え続けている。

写真は、中尊寺本堂に続く表参道の両脇。樹齢300~400年の杉並木がそびえ立ち、中尊寺の歴史を今に伝える堂舎が立ち並ぶ。一方では北上川の流れを眼下に見下ろすことができ、山の木々と水辺の清らかさを併せ持つ。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2011年7月8日号

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