「シウマイ」で知られる崎陽軒が、シウマイぬきの弁当「おべんとう魚」(670円)を発売し大好評を博している。ただし、それは伝統を全否定したわけではないと新製品開発室の吉川里奈氏は強調する。
「当社には、冷めても美味しいご飯や総菜を作る技術がありました。シウマイがなくとも、そうしたノウハウは『おべんとう魚』の開発にあたり、大きな力になりました。歴史があるからこそできた新商品だと思います」(吉川氏)
当初、「絶対に売れない」といっていた東京事業部の石川勝裕・課長代理は頭を掻く。
「『おべんとう魚』が評判になったおかげで、新たな販路の拡大もできました。現在、限定販売している東京は、百貨店や空港での取り扱いが大半を占めますが、中でも羽田空港の“空弁”としての売れ行きが好調です。これまでは駅弁のイメージが強すぎたのですが、その刷新に繋げられるかもしれません。
それに、これまで当社の商品を置いていなかった販売店から取引の申し込みをいただくようになりました。もしかしたら、“崎陽軒といえばシウマイ”というイメージを、われわれが必要以上に強く持ちすぎていたのかもしれません」
もちろんこの成功は、同社の「ノウハウ」だけで達成されたわけではない。ある購入者は「やはり崎陽軒だから安心して買えた」と語った。目に見えない「ブランド力」も成功の支えだったのである。
※週刊ポスト2011年7月8日号