ライフ

放射能の食品基準 “暫定基準”と“暫定”がつく理由とは

「食の安全は大切」「消費者のため」お役所が“正論”を振りかざしている一方で、安全規制の対応はチグハグしている。いつまでも「暫定」であり続ける放射能の食品基準に対して、元行政改革担当大臣の補佐官で政策工房社長の原英史氏が憤る。

 * * *
 今回の原発事故で食の安全規制のチグハグさが問題化した。典型が「暫定基準(値)」という言葉だ。「放射性ヨウ素は飲料水や牛乳で300ベクレル/kg、野菜で2000ベクレル/kgなど、すっかりお馴染みになった数値だが、これは、食品衛生法上、放射能の食品基準がなかったため、暫定的に厚労省が定めたもの。
 
 だが、なぜ、放射能の食品基準は作られていなかったのだろう。かつてチェルノブイリ事故(1986年)の時も、厚生省は「輸入食品中の放射能の暫定限度」(セシウム134と137の合計で370ベクレル/kg)を定め、輸入食品の検査を行なった。
 
 この検査は長く続き、2001年になって欧州からの輸入食品でチェルノブイリ由来の汚染が見つかる例もあった。だが、驚くのは15年を経てなお、「暫定限度」のままだったこと。

 その間、原子力安全行政の領域では、原子力安全委員会が摂取制限の指標を定めている(今回の「暫定基準」の参考にされたもの)。しかし、内閣府の原子力安全行政と厚労省の縦割りの壁もあり、厚労省は「国内では事故が起きていなかったから」(医薬食品局監視安全課)との理由で、放射能基準は作らないままだった。そして今回再び、「暫定基準」を作る事態になったのだ。本来なら、あらかじめ十分に審議検討して規制を作っておくべき。平時は大事なことを放置し続け、緊急時になると慌てて「暫定」で対処。こういう泥縄体質だから、国民は安心できない。

※SAPIO 2011年6月29日号

関連記事

トピックス

俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
『岡田ゆい』名義で活動し脱税していた長嶋未久氏(Instagramより)
《あられもない姿で2億円荒稼ぎ》脱税で刑事告発された40歳女性コスプレイヤーは“過激配信のパイオニア” 大人向けグッズも使って連日配信
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
11月14日に弁護士を通じて勝田州彦・容疑者の最新の肉声を入手した
《公文教室の前で女児を物色した》岡山・兵庫連続女児刺殺犯「勝田州彦」が犯行当日の手口を詳細に告白【“獄中肉声”を独占入手】
週刊ポスト
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン