この夏、経産省と東電の天下り団体に「臨時ボーナス」が出るというのだから呆れるほかない。
資源エネルギー庁は、6月1日から東京電力と東北電力の管内で、小口事業者に「節電サポーター」を派遣している。同庁の説明資料によれば、事業者は以下のような“貴重なアドバイス”をいただけるのだという。
「使用していない部屋や廊下、不要な看板などの消灯を徹底しましょう」
「室内温度は28度とし、使用していない部屋の空調は停止しましょう」
そして、サポーターが作成した「節電行動計画」に同意すると、なんと「節電宣言ステッカー」が授与され、店舗や工場の入り口に貼ることができるのだ! 節電対策に頭を痛める事業者は大助かり……なわけがない。都内の町工場経営者に感想を求めたところ、
「お上がエアコン掃除を指導しにくるのか? バカバカしい。仕事の邪魔だ」の一言。ごもっともです。
さて、この「節電サポーター」の正体は、一般財団法人「関東電気保安協会」などの電気主任技術者だ。彼らは東電などの委託を受けて企業や家庭の電気の点検・保安業務を行なっており、同協会の技術者募集要項によれば給料は約16万~27万円。
今回の節電対策事業では、それとは別に「節電計画に応じた企業1件ごとに報酬が支払われる」(エネ庁省エネルギー対策課)という。
同協会は経産省と東電の天下り先で、理事長は東電元常務の中村秋夫氏。専務理事の深山英房氏と常務理事の井元良氏は経産省OB。職員にも経産省、防衛省・自衛隊などからの天下りが100名以上いる。
受注元の内訳について同協会は「公表していない」(地域サービス部)というが、民間企業情報調査会社によれば主要取引先は東京電力で、東電からの受託業務収入は年間約64億円というから、“電気料金で喰っている団体”と見なしていいだろう。
サポーター訪問のほか、「節電説明会」や「節電相談ダイヤル」の設置には、今年度の1次補正予算で37億円が注ぎ込まれた。経産省と東電の電力行政による失態の尻ぬぐいは血税と電気料金で穴埋めされ、しかもそのカネは天下り先に転がり込む仕組みなのだ。
エネ庁は、「サポーターの人数や報酬額は決定していません。37億円の使途も調整中」(省エネ対策課)と答えるが、こんな事業は百害あって一利なしである。
だいたい、天下り役人どもが“指導”に歩き回る交通機関の動力やステッカーの印刷、説明会会場の照明・空調、そして相談電話に、不要な電力をどれだけ消費しているのか。腹が立つから訊いてみた。
「えっ……把握していません」(省エネ対策課)
隗(かい)より始めよ!
※週刊ポスト2011年7月8日号