猛暑の中、就職シーズンも熱くなってきた。内定を得る学生が必ず読んでいる本があるという。人材コンサルタントの常見陽平氏が語る。
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この間Fラン(偏差値が極端に低い大学)学生で一流企業の内定を取った学生に取材していたんですが、彼が内定した理由は、司馬遼太郎を読んでいたことでした。彼に限らず、就職戦線でキツそうな大学の子でも大企業に就職した子の鞄には必ず司馬遼太郎が入っています。
もともとこの法則は作家・編集者であり、日本語に関する本が多数ある川辺秀美さんの『22歳からの国語力』という本で唱えられたのが最初なのですが、私の取材でもそれが裏付けられました。
なぜ司馬遼太郎かというと、面接官のおじさんたちも好きだからです。就職試験で不安なのは学生だけではありません。面接する側も「この人はどういう人なんだろうか」という気持ちが底にある。
学生と自分の「接点」を見つけようとエントリーシートを眺めていったときに「司馬遼太郎が好き」とあると、嬉しくなって「あの作品はどう思う?」と会話が弾む。「竜馬がゆくのなかで誰が好き?」という質問を通してその人の人間観、組織感を把握することも出来る。
Fラン学生というのも重要です。率直に言うと早稲田・慶応の下位10%の学生よりも、Fランの上位1%学生の方が企業の評価は高い。早慶の下位10%には「お前、早稲田なのにこんなこともわんかねーのかよ」と思うことが多く、逆にFラン1%の学生には「Fランなのに、なかなかやるじゃん」となるからです。
その「やるじゃん」に司馬遼太郎が入っている。おじさんが司馬遼太郎が好きなのは物語の魅力もさることながら、文章が名文の宝庫だからです。
これから就活を迎える学生、フレッシュマンとのコミュニケーションに悩む管理職の方、就活の学生さんには司馬作品の購読をお勧めします。人気が高いのはやはり「竜馬がゆく」ですが、私個人は「国盗り物語」、司馬ファンの友人は「人斬り以蔵」です。