ビジネス

阪神大震災を経験した関西企業 経済再生のノウハウ体得済か

 震災の被害が大きい企業の株価は大きく下落したが、一方で被害の少ない企業の株価は堅調に推移している。特に関西を中心に製造拠点を構えている企業、いわゆる「関西銘柄」は株式市場の有力なテーマのひとつになっている。株式経済新聞(カブケイ)編集局長・冨田康夫氏が解説する。

 * * *
 東日本大震災により、多くの企業や工場が被災し、その復旧・復興にはまだ多くの時間がかかりそうだ。

 その一方で、関西を中心に製造拠点を構え、あるいはメインの商圏が関西以西という企業の場合は、当然ながら東日本大震災による業績のマイナス影響は軽微にとどまっている。

 そうした企業群、いわば「関西銘柄」が今後の市場の大きな物色テーマとして、取り沙汰される可能性が高いと考えている。

 生産拠点をどこに持っていたかで明暗を分けた企業のケースは、既に新聞などで数多く報じられている。例えば、シリコンウエハで世界最大手の信越化学工業は、白河工場(福島県西郷村)が主力の生産拠点だった。それが操業停止を余儀なくされたため、シリコンウエハの世界生産の約2割が滞ったという。

 片や世界2位のSUMCOの場合、山形県の米沢工場は操業停止となったが、生産拠点を分散していたために、供給にさほどの支障が出ていない。シリコンウエハの製造は結晶工程とスライス工程に分かれるが、米沢工場で行なっていた結晶工程は佐賀、伊万里、長崎などの工場でも行なっていて、それらの工場が操業度を上げることで事なきを得ているというのである。

 また、神戸製鋼所のケースなどは、まさに関西銘柄が物色されやすい背景を言い当てているだろう。阪神・淡路大震災時、同社の加古川製鉄所や神戸製鉄所の生産能力が震災前に戻るまで半年を要するなど、甚大な被害を受けた。

 しかし、今回は工場の多くが兵庫県にあることが功を奏し、唯一、操業を停止した真岡製造所(栃木県)も全面復旧し、既に通常の生産状態に戻っており、大震災の業績への影響は軽微で済んでいるという。

 関西に本社や主な生産拠点を構える企業は、総じて、1995年に発生した阪神・淡路大震災における甚大な被害から再生し、それを乗り越えてきた経験を持っている。そのため、被災地への支援活動はもとより、日本経済を再生させるためのさまざまなノウハウを体得していると考えられる。

※マネーポスト2011年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン