震災の被害が大きい企業の株価は大きく下落したが、一方で被害の少ない企業の株価は堅調に推移している。特に関西を中心に製造拠点を構えている企業、いわゆる「関西銘柄」は株式市場の有力なテーマのひとつになっている。株式経済新聞(カブケイ)編集局長・冨田康夫氏が解説する。
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東日本大震災により、多くの企業や工場が被災し、その復旧・復興にはまだ多くの時間がかかりそうだ。
その一方で、関西を中心に製造拠点を構え、あるいはメインの商圏が関西以西という企業の場合は、当然ながら東日本大震災による業績のマイナス影響は軽微にとどまっている。
そうした企業群、いわば「関西銘柄」が今後の市場の大きな物色テーマとして、取り沙汰される可能性が高いと考えている。
生産拠点をどこに持っていたかで明暗を分けた企業のケースは、既に新聞などで数多く報じられている。例えば、シリコンウエハで世界最大手の信越化学工業は、白河工場(福島県西郷村)が主力の生産拠点だった。それが操業停止を余儀なくされたため、シリコンウエハの世界生産の約2割が滞ったという。
片や世界2位のSUMCOの場合、山形県の米沢工場は操業停止となったが、生産拠点を分散していたために、供給にさほどの支障が出ていない。シリコンウエハの製造は結晶工程とスライス工程に分かれるが、米沢工場で行なっていた結晶工程は佐賀、伊万里、長崎などの工場でも行なっていて、それらの工場が操業度を上げることで事なきを得ているというのである。
また、神戸製鋼所のケースなどは、まさに関西銘柄が物色されやすい背景を言い当てているだろう。阪神・淡路大震災時、同社の加古川製鉄所や神戸製鉄所の生産能力が震災前に戻るまで半年を要するなど、甚大な被害を受けた。
しかし、今回は工場の多くが兵庫県にあることが功を奏し、唯一、操業を停止した真岡製造所(栃木県)も全面復旧し、既に通常の生産状態に戻っており、大震災の業績への影響は軽微で済んでいるという。
関西に本社や主な生産拠点を構える企業は、総じて、1995年に発生した阪神・淡路大震災における甚大な被害から再生し、それを乗り越えてきた経験を持っている。そのため、被災地への支援活動はもとより、日本経済を再生させるためのさまざまなノウハウを体得していると考えられる。
※マネーポスト2011年7月号