特捜検察によって起訴され、有罪が確定すると、その細かい内容を知らない人からは無条件に「悪いことをした」という認識を持たれる。しかし、本当にそれで正しいのか。新たに収監された堀江貴文氏、そして鈴木宗男氏――2人の“受刑者”について、自らも最高裁で有罪が確定した経験を持つ作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が論じる。
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元ライブドア社長の堀江貴文氏は、栃木県さくら市の喜連川(きつれがわ)社会復帰促進センターで服役する可能性が高いと言われている。ここは民間資金を活用したPFI刑務所だ。小学館のグループ会社も喜連川社会復帰促進センターの運営に加わっている。ここには鈴木宗男・新党大地代表(前衆議院議員)が服役している。鈴木氏の仕事は、受刑者の配膳係が主で、それに図書係、さらに身体が不自由な受刑者の入浴の手伝いなどをしている。
筆者は鈴木氏に毎日最低1通の手紙を書いている。鈴木氏からの発信は月4回に制限されているので、情報の双方向性は担保されていないが、手紙の文面から鈴木氏が淡々と仕事をこなし、本を読み、出所後の政治活動について戦略を練っていることが伝わってくる。
筆者は堀江氏と何回か雑誌の対談やライブハウスのトークショーで一緒に仕事をしたことがある。堀江氏が東京大学で宗教学を専攻していたことと深いところで関係していると思うが、堀江氏は普通の人の目に見えないものが見える天才だ。この力を今後も日本社会のために生かして欲しい。
日本国民は正義感が強く優秀だ。もし、堀江氏がほんとうの犯罪者だったならば、堀江氏に対する共感が、若い世代を中心にこれだけ拡大することはない。殺人犯、強盗犯、放火犯、強姦犯などを刑務所に閉じ込めておくことには合理的理由がある。しかし、検察との「見解の違い」で有罪になった政治犯や経済犯を社会から隔離する必要はないと思う。ソ連は第2次世界大戦が始まると強制収容所から政治犯を釈放し、前線に送った。東日本大震災後、日本の総力を結集する必要がある。堀江貴文氏、鈴木宗男氏などの力を塀の中に封じ込めておくのではなく、社会で活用すべきと筆者は考える。
※SAPIO 2011年7月20日号