焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」で4名が亡くなる集団食中毒事件が発生して2か月が過ぎた。 「えびす」の運営会社「フーズ・フォーラス」(本社・石川県金沢市)は営業継続を断念し、会社の清算を決めた。
事件直後、報道陣の前で突然土下座して謝罪し、それが「パフォーマンスだ」とさらなる批判を浴びてしまった勘坂康弘・社長(42)が2か月の沈黙を破って口を開いた。
――この2か月はどう過ごしてきたのか。
「事故後はご遺族や被害者の方に謝罪をして回り、(今後の補償などについて)お話をうかがっている状況です。幸い、ほとんどの方が退院されたと聞いています」
――捜査の焦点は、食中毒の原因となった腸管性出血性大腸菌O-111が、どこで付着混入したかだ。
「(仕入れ先だった食肉卸業者の)大和屋商店さんとは一度、電話で話をしただけです。その時は、“ユッケ用としてサンプルをいただきましたよね”という確認をしました。どこで混入したかは、私どもではわかりませんし、警察が捜査に入っているのでお話しすべきではないでしょう」
――「えびす」の安全対策に問題があったのでは。
「ユッケの調理は、専用の器具とスプーンを使って行なっていました。直接手で肉にふれるようなことはしていません。水を使わないことで菌の繁殖を抑えるドライキッチンを使っていました。細心の注意を払っていたことだけは申し上げたい」
――厚労省の「衛生基準」を満たしていなかったのではないか。
「しかし、事件の前に食肉業界でその厳しい基準(生食用の表面を削ってトリミング、その器具の洗浄温度に至るまで厳しく設定している)を知っている人はほとんどいませんでした。私もそうで、だから『えびす』の独自基準を設けて衛生管理に気をつけていました。
ユッケは人気が高いからメニューに必要だった。ただ、リスクが大きい食品であることはわかっていたから、上場を目指していた当社としては将来的にはメニューから外そうと思っていました。その決断が遅かったんです」
●聞き手/伊藤博敏(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2011年7月15日号