ますます露骨になる中国の海洋進出。それにどう対応するかは、日本だけでなく、ベトナムやフィリピンなど南シナ海の国々にとっても大きな課題だ。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、ベトナムやフィリピンの対抗策に日本も学ぶべきだと指摘する。
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中国が「西太平洋とインド洋から米国の影響力を排除する」という大目標を掲げている2040年まで、果たして中国共産党の一党支配はもつのでしょうか。疑問です。しかし、確かなことはその前に我が国が呑み込まれては元も子もないということです。
中国は軍事力増強の目的を「自衛のため」として、先制攻撃はしないと口では言っていますが、2008年の中国の国防白書を読めば、その主張が嘘であることがわかります。
「敵による第一撃を受けて初めて反撃するということは、敵の攻撃を受け身で待つことではない」としたうえで、「政治的第一撃」も攻撃と見なし、中国は武力攻撃の「権利を有する」。つまり、中国が「政治的第一撃」だと思えば、武力を先に使って攻撃するということです。
例えば日本側が尖閣諸島周辺で通常の監視行動を行なうだけでも、中国に「政治的第一撃」とみなされ、日本への先制攻撃を正当化されかねません。
国際法や国家間の取り決めを無視し、国際常識とはおよそかけ離れた自分勝手なルールで領土領海を拡大してきたのが中国です。だからこそ、アジアの国々は懸命に防衛体制を固めています。
ベトナムやフィリピンは、中国との経済的な交流が多い一方で、自らの領土領海を守るためには中国の圧力や嫌がらせに屈せず、言うべきことを言い、軍事力を強化して、必要に応じて演習を行なうなどしています。
日本も、こうした東南アジアの国々のしたたかな国防に学び、尖閣諸島や宮古島沖に中国艦船が現われた時には、きちんと言うべきことを言い、自らを守れるだけの軍事力を整備することが必要です。
また、それでも挑発してくる場合には、逆に自衛隊の護衛艦を沖縄本島と宮古島の間を通過させて中国近海の公海上に派遣するなどして、中国の動きを牽制することも考えるべきです。
日本がそうした強い行動に出れば、ベトナムやフィリピンなどからは歓迎されるはずです。その上で、東南アジア諸国と連携して、中国の覇権拡大を食い止めることが必要です。
※SAPIO 2011年7月20日号