節電のため、この夏に「サマータイム」導入を検討している企業があるが、逆効果の可能性があるという。
サマータイムとは、夏季に時計を1時間進めて始業・終業時間を前倒しする制度で、本来は余暇時間を増やすことが目的だが、現在の日本では早めに終業することで電力消費のピークをシフトする方法として検討されている。
しかし、独立行政法人・産業技術総合研究所(産総研)が節電効果に関するシミュレーション調査を行なったところ、すべての人々が生活時間を1時間前倒しすると、14時の電力需要が抑えられる一方、帰宅によって16時台の家庭での電力需要が増加し、業務と家庭を合計した電力需要は引き上げられる可能性があるというのだ。
産総研・安全科学研究部門の研究員、井原智彦氏はこう解説する。
「家族が家にいる家庭の場合はさほど変わりませんが、東京の場合、独身者や単身赴任者など一人世帯が30%を占めているので、16時に会社から家に帰ってエアコンなどで電力を消費すると、かえって全体の電力消費が増える。エアコンの効率を考えると、なるべく大勢の人が一か所に集まったほうがいい。通常通りの時間帯で仕事をして、普通に家庭で過ごすのがいいということです」
一人世帯の人は、世間の自粛ムードに流されてまっすぐ家に帰ったりせず、大勢の人が集まる場所へ遊びにいったり、飲みにいったりするのが、むしろ節電につながるというわけだ。
※週刊ポスト2011年7月15日号