節電地獄ニッポンの夏に“朗報”が飛び込んできた。
発明家のドクター・中松氏が、持ち運びもできる小型の「超節電エアコン」を開発したというのだ。記録的な猛暑が続く中、都内にあるドクター中松創研を訪ねると、涼しい顔で出迎えてくれた中松氏。吹き出る汗を拭う記者を尻目に、キューブ型の小さな発明品を片手に、説明を始めた。
「商品名はエコのエアコンだから『ECON(エコン)』。6畳間のエアコンの消費電力が400ワットなのに対し、ECONは100分の1の約4ワットの電力しか使いません。それでいて、扇風機のように生ぬるい風を移動させるのではなく、冷たい風が出ます」
それにしても、わずか3平方センチという小さな箱の中にクーラーの機能が詰め込まれているとは驚きだが、一体どんな内部構造になっているのか。
「クーラーのようにモーターやコンプレッサーを回しているわけではありません。地球環境に悪いフロンガスも発生しないので、エコなんです。原理? 簡単にいえば最先端の半導体技術を駆使しています」
技術的なカラクリを頑なに明かそうとしない中松氏。とにかく使ってみなければ、驚異の発明品の実力は分からない。中松氏は携帯用の小型バッテリーをECON本体に接続し、記者の顔にゆっくりと近づけた――。
ん……? 14度に設定してあるという通り、確かに冷たい風を顔に感じたが、いかんせん、風量が物足りない。ワイシャツの胸ポケットに入れてみると、ジワリと清涼感が漂ってくる。携帯バッテリーの持続時間は約3時間とのことなので、短い取材時間では満足感が得られなかったのが残念。
気になるECONの販売価格は、開発費用の2億円と1台作る原価を考えると、10万円は下らないというが、それでは大型のクーラーが買えてしまう。
「ボクは先日、83歳の誕生日を迎えたので、記念価格で1万5000円。完全に赤字ですけどね(笑い)」
と話す中松氏だが、早くもECONに続く節電商品も発明済みだという。
「少ない風量でも回る静音の『ノイズレス風力発電』や、曇りや北側の場所でも発電するソーラーなど、既に実用段階に入っています」
夏が終わらぬうちにお願いします……。
撮影■丹羽敏通
※週刊ポスト2011年7月15日号