6月20日の警察庁発表によれば、5月の全国の自殺者は3329人で昨年同月比19.7%増(547人増)。一般に自殺者が増加するのは企業が決算期を迎える9月と3月とされるが、5月の数字は2008年以降の月別自殺者数で最多となっている。
1998年以降、日本の年間自殺者は13年連続で3万人を上回っている。「千年に一度」といわれた東日本大震災の死者・不明者は約2万2800人。それを上回る規模で、毎年、日本人の命を奪っているのだ。
しかし、政府の認識は極めて軽薄だ。
警察庁の発表を受けて、蓮舫・行政刷新相(共生社会政策担当)は「看過できない」と述べて「早急な分析」を指示したが、当の本人は27日の内閣改造でその職を解かれた。調査を行なう内閣府は「東日本大震災が影響している可能性」に言及したが、分析の進捗について問うと、「震災後の自殺者の性別や年代、出身地の調査に取りかかっている段階で、結果を述べる段階ではない」(内閣府経済社会総合研究所)と答えるのみだ。
「震災の影響」を分析の前提とするのは無責任極まりない。警察庁の発表では被災3県(岩手、宮城、福島)のうち、福島では前年より19人増加して68人だったものの、宮城は前年と同数、岩手では3名減の32人。特に増えているのは東京や大阪の大都市圏で、震災と直接関係のない西日本や九州でも平均15%超の増加だ。
自殺防止に取り組むNPO団体「蜘蛛の糸」の佐藤久男・代表が語る。
「自殺に至る背景にはいくつもの要因が複雑に絡み合っている。しかし、政府の自殺白書では『健康問題』『経済問題』『家庭問題』といった間口の広い分け方をしているために、むしろ原因をわかりにくくしている」
※週刊ポスト2011年7月15日号