日本株は安い。景気が長期低迷しているから当然という言い方もできるが、一方で多くの上場企業はそのなかでも利益を上げているし、大企業の内部留保は年々増えており、2009年度で257兆円に達した(財務省・法人企業統計年報)。
それでも東証1部上場1673社のうち、株価純資産倍率(PBR)が1倍を切る、すなわち会社の総資産が株式の時価総額=「会社の値段」を上回る企業が1074社にも及んでいるのである。
株主にとって、事業を続けなくても今すぐに会社を清算すれば利益が出るという、黒字企業では普通はあり得ない状態が過半というわけである。このなかには日本を代表する優良企業であるパナソニック(PBR0.93倍)やシャープ(同0.76倍)なども含まれる。
株式相場はずいぶん前から「超バーゲンセール」といわれてきたが、それでも外国人投資家や機関投資家などは“まだ下がるかもしれない”“浮上のサインがまだ出ない”と買い渋り、なかなか底が見えてこない。
日本株分析に定評がある立花証券執行役員・平野憲一氏に「大底の読み方」を聞いた。
「今の相場が大底に近いことは間違いない。しかし、デフレが止まらず、政府の経済政策にも疑問があるため、反転のタイミングが読めない状態が続いています。
反転のサインとしては、第1にデフレ脱却が確認されること。消費者物価指数が3か月連続でプラスになれば、市場は“そろそろか”と動き始めるでしょう。
もう1つは政府が本格的な景気刺激策を実施すること。震災復興の第3次補正予算に中身があれば、きっかけになる可能性があります。
いずれにせよ、いったん反転の流れに乗れば、日本株は値上がり余地が非常に大きい。4年間くらい経済成長が続けば、銀行株などは今の5倍になってもおかしくないでしょう。
また、震災や円高を契機に海外移転する企業も増えています。これは国内の雇用にはマイナスですが、個別の企業にとっては大きな成長戦略です。投資家は、そうした世界に出て活躍する企業に投資し、その利益を自分たちも享受することを考えておくべきだと思います」
※週刊ポスト2011年7月15日号