国内

原発事故で癌・奇形増えるとされるが過去に明確なデータなし

福島原発事故で日本人が大量に「がん」になり、子供は「奇形」だらけになると一部のメディアが騒ぎたてている。それは本当なのか、事実とデータで検証しよう。

大気圏での核実験が行なわれていた1960年代前半に日本人のフォールアウト(死の灰)による被曝量は急増した。その被曝量はほとんどの地域で今回の事故を上回っている。

広島・長崎で原爆被爆者の健康被害を追跡調査した記録によれば(参考「原爆放射線の人体影響」1992年)、白血病を除くがんの発症は、被曝後10年目から現われ始め、徐々に増えながら35~40年目にピークを迎えることがわかっている。

もし核実験や原発事故による被曝でもがんが増えるとすれば、1970年代には日本人のがん死が増え始め、2000年前後にピークを迎えていたはずである。

事実はどうか。日本人のがん発症率、がん死亡率が上がっていることはよく知られているが、それは平均寿命の伸びが主な理由なので(がんは老齢になるほど発症しやすいため)、公平に比較するために「40~44歳男性のがん発症率(10万人中、何人ががんに罹ったか)」の推移を調べた。この年齢層なら、2005年段階でも確実に核実験により被曝していたはずである。

・1975年 103.4人
・1980年 102.3人
・1985年 111.2人
・1990年 126.4人
・1995年 109.9人
・2000年 104.2人
・2005年 114.1人

一目瞭然。がん発症率に関して、少なくともフォールアウト被曝による影響は全く見られないということができる。

「奇形児」も増えていない。

小頭症、心臓の先天奇形、先天性股関節脱臼、口蓋裂、多指症、合指症などの先天異常の発生率は、日本産婦人科医会のモニタリング調査によると、1970年代から1990年代半ばまで0.7~1%でほぼ横ばいとなっており、フォールアウトの影響はない(ちなみに1997年以降、発生率そのものは約1%増加しているが、それは心臓血管形態異常が含まれるようになったためである)。

なお、原爆により核実験や原発事故とは比較にならないほどの被曝を経験した広島・長崎では、戦後間もない1948~54年の6年間に、ほぼすべての妊娠例を調査し、6万5431人の新生児のうち594例で重い先天性障害があったと報告されている。障害発生率は0.91%になる。

これに対し、東京赤十字病院では、被曝とは全く関係ない集団で新生児の障害発生率を調査している。結果は0.92%。ここまで数字が揃えば、原爆被爆者でさえも、被曝の影響による子供の先天的異常がなかったことは確実である。

現に被爆者の健康調査を続けている財団法人放射線影響研究所は、被爆者の子供への影響は「認められない」と結論づけている。

なお、国際放射線防護委員会(ICRP)では、胎児の被曝についても、妊婦が100ミリグレイ(≒ミリシーベルト)以下の被曝量であれば影響は出ないと報告している。今の日本で、これを超える被曝をしている妊婦は1人もいない。

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

関連記事

トピックス

学生時代は、練習や授業の合間におむすびを食べていた
(写真/AFLO)
《おむすびアンバサダーに就任》大谷翔平、CMオファー殺到で“撮影は1社2時間”の新ルール ファミマCM撮影では「2時間でおむすび19個を爆食い」のハードワーク
女性セブン
「BTS」のメンバーで、とりわけ高い人気を誇るジン(写真/AFLO)
BTSジンに“奇襲キス”50代日本人ファンに出頭要請 韓国当局が引き渡しを求めれば日本政府は応じる可能性、「ジンさんが処罰を求めるかどうかが捜査に影響」と弁護士解説
女性セブン
テレビ東京を退社した福田典子アナ
【独占インタビュー】元テレビ東京・福田典子アナ「退社と離婚」を初告白「広報をしていた会社を辞め、今は夫と別々の道を歩んでいます」
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《小西優花被告に懲役25年求刑》「どうせ捕まるなら死なせたほうがいい」「こいつイカれてますね」内田梨瑚被告が主張した“舎弟の残虐性”と“供述のズレ”
NEWSポストセブン
1番打者に指名されたドジャース・大谷翔平とカブス・今永昇太の日本人対決で開幕する(写真/AFLO)
【3.18ドジャースvsカブス開幕戦の見どころ】侍対決は「配球」と「駆け引き」に注目、今永昇太の高めストレートに大谷翔平がどう反応するか
週刊ポスト
女優・杉咲花(27)を起用したサントリージン「翠(SUI)」の広告の“改行位置”が話題となっている
「改行するところおかしくない?」サントリージン「翠(SUI)」新広告のデザインに疑問の声が殺到、同社広報部が真意を明かす
NEWSポストセブン
デビュー10年を迎えた今田美桜
【次期朝ドラヒロイン】俳優・今田美桜が語る「悩むことも必要なこと」 劇場版『トリリオンゲーム』では15cmのヒールで「“キリカ筋”が引き締まった」秘話も
週刊ポスト
”点検商法”で逮捕された斎藤大器容疑者(33)。”トクリュウ”のリーダーである可能性もあるという(本人SNSより)
《トクリュウ逮捕》「財布の分厚い現ナマを見せつけ」「“やれそうな子”以外にはケチ」6億円豪邸にロールスロイス…「富豪アピールSNS」の斎藤大器容疑者(33)が夜の街で見せていた“素顔”
NEWSポストセブン
殺人などの罪に問われた内田梨瑚被告、小西優花被告(SNSより)
《旭川女子高生殺人・公判》「マリファナ運んでる」「リコの体に合うの」共犯者に“黙秘指示” もした内田梨瑚被告(22)の“イキリ系素顔”と“薬物アピール”
NEWSポストセブン
第5子妊娠を発表した辻希美
《逆転した夫婦関係》辻希美が第5子妊娠発表前の一家総出ファミレス、全身黒ゆるジャージで寄り添う夫とのペアルック 明かしていた「もう一度子どもを育てたい」の想い
NEWSポストセブン
結婚発表の前日、夫婦水入らずで”映画デート”を楽しんでいた筧美和子(30)
【筧美和子が結婚】「肩を抱かれ、頬にキスを…」真っ赤なニットで大胆に、イケメン経営者との結婚発表前日“映画デート”一部始終
NEWSポストセブン
倉庫内に保管されている政府の備蓄米(時事通信フォト)
今も続く「令和の米騒動」 一攫千金を狙って買い込んだ”転売ヤー”たちの嘆き「SNSやフリマアプリでもほとんど売れない」
NEWSポストセブン