東日本大震災の直後から、企業として「脱原発」を掲げ、大きな話題になっている金融機関、城南信用金庫。東京都と神奈川県で計85店舗を展開する同信金は、4月8日にいち早くHPで「原発に頼らない安全な社会へ」というメッセージを発信。被災地に向けて独自の社会貢献も行なっている。吉原毅・理事長に具体的な内容について聞いた。
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――震災後、職員の社会貢献への意識が高まっているとか。
吉原:震災直後から、そういう思いを持ってもらいたいと考えてきました。震災の翌営業日には「ボランティア休暇」を創設しました。職員のボランティア活動を支援するということで、宿泊代や交通費、現地での活動費用を当金庫が負担し、現地へ行ってもらっています。今は、交代しながら常時6~7名が被災地へ行って炊き出しをしたり、被災した方々の片付けを手伝ったりしています。現地の信用金庫を回って支援物資を届けることもしました。休日には、20人以上の1日ボランティア隊が応援に駆け付けています。もちろん私も、炊き出しの手伝いをさせていただきました。
――被災地に行った職員の反応はどうでした?
吉原:東京にいて、「何かしてあげたい」という気持ちは自然にありますよね。だけど、一人ではどうしたらいいかわからない。そこで、会社がバスを用意するとか、宿泊所を用意するとか、そういうことをすれば、志願してくれる職員はいるんです。そして現地で貴重な経験をすることによって、「人の役に立つことがいかに大事か」という当たり前の原点に立ち返ることができる。そういった思いをこれからの仕事に生かしたい、という声を聞きます。
――法人としての社会貢献への取り組みにつながるということですか。
吉原:そうですね。やはり現地に行くと様々なことがわかります。被災地の信用金庫の理事長と話をすると、店舗が半分以上流されてしまったなど、大変な状況がある。そうして話をしていく中で「4月から働いてもらう予定だった内定者を引き取ってもらえないか」という申し出を受けました。震災の影響でこのままでは内定を取り消さざるを得ないと聞いたので、私たちが花巻まで行って面接をすることにしたんです。
――臨時の面接ですね。その結果は?
吉原:非常に優秀な方々でしたので、こちらからお願いして、岩手県の信金から6名採用させてもらいました。その後で、福島県の信金からも、「10名採用してもらえないか」という話をいただいた。こちらは原発事故による避難命令を受けて、数店舗が閉鎖になってしまっていました。もう元通りに営業できるのがいつになるかわからない、そういう非常に難しい状況です。ですからやはり面接をしまして、こちらに来ることを希望してくれた4名を全員採用しました。
結果、合計10名を新たに被災地から採用したことになります。研修を経て6月1日に無事入職式を迎えました。
※SAPIO 2011年7月20日号