運と政治力だけでトップになったリーダーがいかに組織を迷走させるか多くの日本国民が今それを実感していることだろう。だが、リーダーシップ論となると、多くの日本人が誤解をしている。大前研一氏が指摘する。
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日本の場合、リーダーシップ論になると、スポーツのアナロジーが多い。野球、サッカー、ラグビー、バレーボールなどのスパルタ型、もしくはその逆のチームプレー型で成功した監督のリーダーシップに学ぼう、というわけである。実際、それを好む経営者は少なくないし、経営者を相手に「鬼監督」が講演している場面にもよく出くわす。
だが、これは大きな誤りだ。そんなリーダーシップは、組織を動かすリーダーはもとより、部下が9人とか15人の最前線のリーダーであっても役に立たないと思う。経営の場合、もはや一部の特殊な業界を除き、スパルタ型で部下がついてくる時代ではない。
また、たとえ部下が10人でも、チームプレーということは、まずない。10人みんなが同じ仕事をしたり、何人かで同じお客さんを担当したりすることはあり得ない。担当者が休んだ時や何か突発的な事態が起きた時に他の人間がカバーすることはあっても、基本的には10人がバラバラに動き、一人一人が最大の能力を発揮することで全体の効率を上げていかねばならないのだ。スポーツのアナロジーは美しくて分かりやすいが、経営には通用しないのである。
※SAPIO 2011年7月20日号