国内

野菜の規格 「形」や「大きさ」ばかりで「おいしさ」は無視

 農産物に関する様々な規制を見ると、この国の農業は役所や農協によって“おいしい作物”を作らせないようにされているとしか思えない。さらにその規制が農業の真の再生を阻んでいるのである。元行政改革担当大臣の補佐官で政策工房社長の原英史氏が憤る。

 * * *
「規格外」の野菜がちょっとしたブームになっている。スーパーではまずお目にかからないが、専門の宅配や通販もある。ねじ曲がっていて形は悪いが、値段は割安で、味はかえっておいしかったりする。

 農産物の「規格」とは、各自治体や農協が、出荷に際して設けている基準のことだ。農家が農協経由で出荷する際は、必ずこの規格に従う。内容は地域によりまちまちだが、例えばきゅうりなら、「A級品は曲がりが1.5センチメートル以内」などの定めがあり、A級品以外は、まず市場に出回らない。だから、街中で目にするきゅうりは、みんな真っ直ぐなのだ。

 各地の「規格」が似たり寄ったりであることには、理由がある。昭和40年代に、農林省(現・農林水産省)が蚕糸園芸局長通達などの形で、全国の標準規格を定めたからだ。例えば、「きゅうりの標準規格」を見ると、

・品位基準として、「A級品は曲がりが2 センチメートル以内、B 級品は曲がり4 センチメートル以内」

・大小基準として、短形種の場合は「L:21センチメートル以上23センチメートル未満、M:19センチメートル以上21センチメートル未満、S:16センチメートル以上19センチメートル未満」

 などと書いてある。「標準規格」は2002年になって廃止されたが、これをモデルに、各地の「規格」が出来上がった。「標準規格」は、きゅうり以外にも、たまねぎ、レタス、キャベツ、トマトなどで作られた。

 いずれにも共通するのは、「大きさ」と「カタチ」に注目していることで、「おいしさ」や栄養は関係ない。

 本当は、野菜は作り方によって味が違う。だが、農家が農協経由で出荷する場合、「大きさ」と「カタチ」が優先される。「規格」に合えば引き取ってもらえるが、「規格外」ならば事実上、引き取りを拒否される。いくら「おいしさには自信がある」と抗弁しても、関係ないわけだ。

 そして、農協で引き取られた野菜は、他の農家の野菜とごちゃ混ぜにされ、卸売市場に引き取られていく。この仕組みでは、「おいしさ」を追求しようという意欲が損なわれても無理はない。

※SAPIO 2011年7月20日号

関連記事

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト