白澤卓二氏は、1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として、著書やテレビ出演も多数の白澤氏が、「長寿遺伝子をオンにする」方法を紹介する。
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この世の中で最も長生きしたフランス人女性カルマンさんは、1875年に南フランスのアルルで生まれ、122歳(1997年没)まで生きたというギネス記録の保持者。若い頃カルマンさんは画材道具屋でアルバイトをしていたが、そこを訪れた後期印象派の画家ヴァン・ゴッホが彼女に、「ちょっかい」を出していたというエピソードは有名だ。
ポートワインが好きで、100歳を過ぎてからもワインとチョコレートを毎日欠かさず、アルルの街を飄々と自転車を乗り回していた「元気おばあちゃん」だった。
最近、この赤ワインの中に長寿遺伝子のスイッチをオンにする物質が発見され話題を呼んでいる。ハーバード大学のデービット・シンクレア教授は赤ワインの中のレスベラトロールという成分に注目。
この物質はサーチュインという長寿遺伝子のスイッチをオンにして、メタボリック症候群の症状を改善、血管を若々しく保ち、寿命をも延ばす可能性を示唆。
レスベラトロールは赤ブドウの皮や種に豊富に含まれる成分で、赤ワインを選択した人は長寿遺伝子のスイッチがオンになるが、白ワインを選択した人は長寿遺伝子のスイッチが入らないことが分かった。
この物質はピーナッツの薄皮にも豊富に含まれている。薄皮を剥いて食べている人は長寿遺伝子のスイッチが入らない可能性があるので、薄皮付きのピーナッツをおつまみに赤ワインを嗜むのが、手っ取り早く長寿遺伝子をオンにする生活習慣といえる。
摂取カロリー制限すると動物の寿命が延びるが、実際、哺乳動物をカロリー制限すると赤ワインで活性化されるサーチュインという長寿遺伝子のスイッチがオンになることが分かった。
食事は常に腹7分目でとどめ定期的に運動していれば、赤ワインを飲まなくても長寿遺伝子をオンにできる。長寿遺伝子は意外にも我々の最も身近な存在だった。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号