「脱原発」国家が叫ばれている。だが、このままいくと来年5月までに日本の大半の原発が止り、製造業を中心に日本経済は危機的状況に向かう。はたして、どんな問題点、そして処方箋があるのか。大前研一氏が解説する。
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日本の原子力発電所は現在、全国54基のうち35基が東日本大震災の影響や定期検査などで停止している。本来なら夏場までに再稼働するはずだった被災地以外の原発(11基)も、佐賀県の九州電力・玄海原発以外は地元自治体のコンセンサスを得ることができず、再稼働のメドが立たずにいる。
このままいくと来年5月までに日本は大半の原発が止まって全国的な電力不足が起きるため、製造業を中心に、国内での事業に支障をきたす企業の海外シフトが加速し、日本経済は危機的状況に向かうだろう。
この最悪の事態を回避するためには、政府が福島第一原発の事故原因や問題点を早急かつ徹底的に究明し、それを基に原発の安全性を確保する万全の対策を打ち出して、再稼働に対する地元住民の理解と合意を形成しなければならない。
ところが、政府が設置した「事故調査・検証委員会」の顔ぶれを見ると、「失敗学」の提唱者として知られる委員長の畑村洋太郎・東大名誉教授は機械工学が専門だし、他のメンバーも地震学や放射線医学の学者、前国連大使、元検事、元裁判官、弁護士、町長、作家などで、原子炉の専門家はいない。
これでは、福島第一原発事故の真実を国民が納得するような深部までえぐり出すのは難しいだろう。また、同委員会は今年12月をメドに中間報告、来年夏までに最終報告をまとめるというが、そんな悠長なことをしている余裕はない。3か月程度の“突貫工事”で仕上げるべきである。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号