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大前研一氏 原発ストレステストはIAEAの専門チームに委ねよ

「脱原発」国家が叫ばれている。だが、このままいくと来年5月までに日本の大半の原発が止まり、製造業を中心に日本経済は危機的状況に向かう。はたして、どんな問題点、そして処方箋があるのか。大前研一氏が解説する。

 * * *
 どうやって地元住民の信頼を回復し、原発の再稼働を実現させるか?

 第一段階は、原子炉および原発の“現場を熟知しているエキスパート”を集め、福島第一原発で本当は何が起きたのか、どこに技術的な欠陥と人為的なミスがあったのか、どうすれば原発はより安全になるか、を洗いざらい調べ上げ、包み隠さず公開する。

 それは全部で200項目ほどに及ぶだろうが、これらを難易度に応じて三つに分類する。<1>簡単に改善できる問題、<2>設備投資によって解決できる問題、<3>設計概念から根本的に作り直さなければならない問題、である。

 たとえば、二次冷却用の海水を取り入れるポンプとモーターは、海に面した低い場所に無防備に設置されていたため、そのうちのいつくかは津波で壊れて機能しなかった。今後それらの設備は、津波に耐えられる強固な防護壁や建屋で守らなければならない。

 これは<2>だ。<3>の具体例としては水素爆発で破断した、原子炉建屋とタービン建屋の間のトンネル内に敷設された配管と配線の問題が挙げられる。これらは地下に埋設するなどの抜本的な変更が必要となる。

 第二段階は、専門家によるストレステスト(安全性検査/大規模災害や航空機墜落といった最悪の事態を想定して耐久性などを詳しく審査する)だ。これに合格した原発のみ再稼働を許可するわけだが、その審査の担い手が原子力安全・保安院や原子力安全委員会では誰も信用しない。各国の専門家から成るIAEA(国際原子力機関)の国際的なチームに委ねるべきだ。

 以上の公正なステップを踏んで、地元住民が原発を許容できるだけの安全度を確保することが今急ぐべき政府の仕事なのである。

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

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