現在、国が定める食品のセシウム暫定規制値は1kgあたり500ベクレル。これは原発事故後、3月17日に「暫定」としてもうけられた数値だ。それまで国内規制値は存在せず、輸入品にのみ規制値がもうけられていた。現在も輸入品については、事故前と同じ370ベクレルという規制値だ。環境放射能に詳しい北里大学獣医学部の伊藤伸彦教授はこう解説する。
「500ベクレルという数字は、食品とともに体内に取り込まれたセシウムが発する放射線の実効線量を年間5ミリシーベルト以下になるように、国際放射線防護委員会(ICRP)が示した数値などを基にしています。しかし、他の国々と比べると、それはかなり緩い数値なのです」
アメリカの1200ベクレルは別として、韓国や台湾は370ベクレル。チェルノブイリの被害に遭ったロシアやベラルーシ、ウクライナは130~150ベクレルという厳しい数値だ。さらに、ベラルーシでは調理済みの幼児用児童食品に限り、37ベクレルという規制値までもうけている。
「500ベクレル以下であれば、健康への問題はない」と説明する政府だが、これまでも多くのメディアで報じられているように、低線量被曝についての健康被害についてはまだまだ研究の途上。決して安心できる根拠はない。琉球大学の矢ヶ崎克馬名誉教授も日本の基準に疑問を投げかける。
「年間5ミリシーベルトなら安全というのは根拠のない数値です。政府は低線量被曝で起こる危険性を一切無視しているんです。10ベクレル以下を検出限界としてカウントしないのは大変なごまかし。例えば、ドイツの飲み水の規制値は1kgあたり8ベクレルと10ベクレル以下です。それと比較すると、日本は200ベクレルとなっていますし、国民の健康を守れる数値とはいえません」
※女性セブン2011年7月28日号