3月11日の地震発生から1週間程度で、為替相場は大きく動き、FX(外国為替証拠金取引)投資家の中には大きく損失を出した人も少なくないだろう。この乱高下相場の背景を、金融ジャーナリストの鈴木雅光氏が検証する。
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3月中旬、東北地方太平洋沖地震発生の1週間後、外国為替市場では急激な円高が襲ってきた。チャートを見ても、ややイレギュラーな価格形成ではあるが、3月17日の早朝、最も取引高の薄い時間帯に、円は、1ドル=76円25銭という、過去最高値を更新した。
1ドル=76円25銭を付けたのは、ほんの一瞬の出来事だっただけに、ドル売りを仕掛けたファンド筋のなかには、買い戻せなかったところもあったようだ。15分足で見ると、急激にドルが下落したのは5時45分から6時15分までの30分間だけで、その後は東京マーケットがスタートした後の10時15分にかけて、1ドル=79円台後半まで戻している。
この瞬間的な超円高は、FX投資家に大きなダメージを与えた。30代の投資家はこう語る。
「大量のドルのロング(買い)・ポジションを抱えていたのですが、朝になってトレード画面を開けたら、『ロスカット』のお知らせという赤い文字が飛び込んできました。一瞬、何が起こったのか、理解できませんでした」
長らく低金利が続いている日本では、スワップポイント(金利差)狙いも含めて、ロング・ポジションをとるFX投資家が極めて多い。だからこそ、ファンド筋の標的となり、その被害も甚大となった。証拠金の大半を失ってしまった投資家も少なくない。
では、個人投資家で上手くドルの底値を取りにいけた人はいたのだろうか。どうやら、これもほとんどいなかったようだ。ディーラーズテクノロジー代表・大前雅生氏が解説する。
「とにかく動きが速かったので、ドルの底値を上手く取った個人投資家というのは、まずいなかったと見てよいでしょう。1ドル=76円台を見た時にドルの買いオーダーを出しても、実際に買えたのは、1ドル=77円50銭近辺だったし、FX会社のシステムが普通に稼働するようになり、個人のオーダーが入りやすくなったのは、1ドル=78円を超えたあたりからでした」
※マネーポスト2011年7月号