【書評】 『警視庁組織犯罪対策部』(相馬勝著/イースト・プレス/840円・税込)
表題にある「警視庁組織犯罪対策部(通称ソタイ)」とは、外国人や暴力団の組織犯罪に対処するために2003年に新設された部署である。本書は組対の捜査官の視点から中国人による凶悪犯罪の実態を追ったノンフィクションだ。テレビ番組の「警察24時」のように実際に起きた事件のエピソードが満載で、刺激的な一作である。
日本の犯罪の常識を覆したのが中国人犯罪者と言える。緊縛強盗やカード詐欺、自販機盗、偽装結婚・認知、地下銀行など、それまで日本人が思いもつかなかった犯罪を次々に編み出した。
本書で紹介されている家電量販店窃盗事件では、同胞である中国人を騙しておとりに使っている。捜査官は騙された中国人にこう言う。
〈奴らは我々が君を逮捕している最中にだね、パソコンやハイビジョンのテレビなど値の張る商品を多数かっぱらっていきやがったんだ〉
あまりに見事な手口で、怒りを通り越して感心するほどである。
粘着テープで鼻や口を塞いで窒息死させるような残虐な手口こそ減ったが、今も外国人犯罪の検挙者の半数は中国人だ。むしろ日本の社会に中国黒社会が深く静かに浸透しつつあると著者は言う。
〈いまや蛇頭は密航ビジネスだけでなく、密航させた人蛇を使って、殺人や麻薬密売、緊縛強盗、買春、カード偽造などあらゆる犯罪に手を染めさせて、そのうわまえをピンはねする〉
数十万人ともいわれる不正入国者の生活を援助するため、地下の病院や銀行、学校など“社会インフラ”も整備されている。この黒社会に、中国残留孤児の2世、3世が吸い込まれていくという現実には暗澹たる思いがする。
※SAPIO 2011年7月20日号