株式市場では、震災直後の外国人投資家による日本株買いが注目を集めた。実際、日経平均株価が安値8227円から一時1万円の大台に乗せる、大きな原動力となった。こうした外国人投資家の狙いについて、海外マネーの動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏が解説する。
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外国人投資家の日本株投資は、震災ショックで急落した日本株に対する短期的な逆張りではない。割安感が拡大し、投資金額を増やしたことは事実だが、震災以前から継続的に買ってきているからだ。東証が発表している投資主体別売買動向を見ても、外国人投資家は2010年9月から連続8か月、金額ベースでは6兆円ほど買い越しているのである。
この買いの主役の1人は、欧米のグローバル型投資信託だ。2010年11月以降、9000億円程度の買い越しをしていると見られる。欧米あるいは新興国の主要市場に対する、日本株の割安度を重視して買い越しを継続してきており、震災後から現在に至るまでも大幅なロング・ポジションを保有したままとなっている。そして、重要なのは、今後も買い越しを継続する可能性が高いことだ。
欧州最大手の投信および年金を運用する機関投資家の運用トップは、私の取材に対して、当面、日本株に対するポジティブな材料が出るたびに、買い増す方針であることを言明した。彼は、損壊した東北の三陸道が、わずか5日間で復旧した事実に驚き、日本の底力を再認識したという。震災後に全世界の運用担当者に日本株をレコメンドし、自身も復興関連銘柄を買い、現在も保有しているという。
こうした考えを持っている機関投資家は、彼だけにとどまらない。そして、そんな機関投資家たちが注目する日本株のポジティブな材料が、2012年の日本のGDP成長率なのである。震災によって、日本の2011年のGDP 成長率は大きく下方修正されることが確実となっているが、逆に、2012年のGDP成長率は主要国で日本が最も高くなることが予想されているのだ。
欧米の機関投資家は、マクロ経済の動向については非常に敏感で、マクロ経済の裏付けのない市場に投資することは基本的にはない。そして、マクロ経済の指標として最も重視しているのは、IMF(国際通貨基金)の経済見通しである。
すでに、4月に主要国の2011年と2012年のGDP成長率の予想数字が発表されている。次の発表は7月上旬の予定だが、そこで、4月の予想値に対して最も上方修正の幅が大きいと予想されるのが日本。当然、2011年の下方修正の反動によって2012年の数字が上方修正される側面が強いのだが、2011年のGDP成長率を現時点の株式市場が織り込んでいると考えれば、上方修正をポジティブな材料として日本株を買う理屈が立つ。
マクロ経済指標に反応する欧米の機関投資家が買ってくるのは、日経225先物であろう。日本政府の第2次補正予算の国会通過を前提に、7月にかけて日経225の買いのチャンスが訪れる可能性がある。
※マネーポスト2011年7月号