スポーツ

なでしこ オシムの「日本サッカーを日本化」を男より先に実現

ワールドカップ決勝戦で、相手アメリカチームのFW・ワンバグの手が、頭を撫でてしまうほど小さい「なでしこ」たち。身長差20センチをはねのけて、なぜ「なでしこジャパン」は勝てたのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が、独自の視点を展開する。

* * *

日本女子サッカーに「なでしこジャパン」という愛称がつけられたのは2004年。それから短期間で、世界の頂点に上り詰めました。「なでしこジャパン」は公募でつけられたニックネーム。その由来は、日本女性の理想像「大和なでしこ」。私はその「なでしこ」にこそ、今回の大金星の秘密が潜んでいると思うのです。

「なでしこ」という花の語源は、「撫でし子」。撫で撫でしたいほどかわいらしい子ども。そのように可憐な花、という意味です。今回の快進撃は、ズバリ、その「撫で撫で」に秘密があるのです。

ドイツ、スウェーデン、アメリカ。相手の体格はいずれもデカかった。決勝戦のアメリカ、FW・ワンバグは181センチ。日本の平均身長は164センチ。なんと身長差が20センチ近く。ワンバグの手が、日本選手の頭を撫でてしまうほど。まるで大人と子供です。

日本チームは、自分たちの「劣勢」をはっきりと「自覚」していました。選手も監督も、自分たちが「撫でし子」だということを、はっきり意識していたのです。優勝した時、佐々木監督が「ちっちゃな娘たちがよくやってくれた」とコメントしたように。

しかし、日本は「小さい」という特性を、マイナスではなくプラスに転化したのです。日本女子サッカーにしかない、日本「らしさ」とは何か。小さい。だから小回りが効く。攻守を素早くスイッチ。全員が走り続ける持久力。協調性が高くネットワーク化が得意。そして、“絶対に負けない”、あきらめない精神。

そうした特徴を明確に自覚化して、戦術化したのです。

「日本サッカーを日本化する」と語ったのは、かつての日本代表監督、イビチャ・オシムでしたが、それを一早く実現したのは女子チームでした。欧米のチームにとって、日本戦はやりにくかったはず。頭を撫でたくなるくらいちっちゃい相手が、足もとをちょろちょろ動くのですから。世界の有力チームが口を揃えて、「日本と当たりたくない」とコメントしていたのはそのせいです。

身長だけではありません。体力。筋力。そしてサッカー環境。すべての条件において、日本は欧米のチームに「負けて」いた。日本では「最も待遇が良い」といわれるクラブチームでさえ、女子の場合は月給たった10万円前とか。レジ打ち、仲居など副業でなんとか選手を続けている選手も多い。

「強大なるは下にあり、柔弱なるは上にある」という老子の言葉の深い意味を、日本女子サッカーは身をもって示してくれました。

「大和なでしこ」といえば優しくしとやかな女性、というイメージが一般的です。そして、なでしこの花言葉は「純愛」。しかし、それだけでない。なでしこの花言葉は「勇敢」「野心」「大胆」と続くのです。

「なでしこジャパン」がピッチ上で見せてくれたのは、なでしこの花言葉、すべてでした。

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト