農産物に関する様々な規制を見ると、この国の農業は役所や農協によって“おいしい作物”を作らせないようにされているとしか思えない。さらにその規制が農業の真の再生を阻んでいるのである。元行政改革担当大臣の補佐官で政策工房社長の原英史氏が憤る。
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日本の農畜産物の「規格主義」は果物、コメ、肉、牛乳など、すべて一緒だ。
観光用牧場で牛乳を飲むと、店で買う牛乳とは別次元のおいしさに、驚くことがある。搾りたてということもあるが、最大の理由は、農協で出荷する牛乳の場合、おいしいのもまずいのも、全部混ぜているからだ。
牛乳の味は酪農家の腕ではっきり差が出ると言われる。しかし、牛乳の流通には野菜よりさらに規制があって、酪農家は「一部は農協、残りは独自ルートで出荷」というやり方が認められない。
農林水産省生産局長通達で「全量委託」が原則とされ、「全量を農協」か「全量を独自ルート」か、どちらか選ばないといけないのだ。「全量を独自ルート」で販売するのは酪農家にとってハードルがとても高い。どうしても「農協」で他の牛乳と混ぜる道を選ばざるをえない。出荷される牛乳は「農協」ごとの単位にしかならない。
他の牛乳と混ぜられれば、味の良し悪しにかかわらず買い取り価格は一緒。これでは腕のいい酪農家のモチベーションを奪いかねない。
なぜ、こんな規制があるか。味で競争を始めると酪農家の腕の優劣がはっきりする。組合がまとまらなくなり、安定供給できなくなると困るという「組合の組織維持の論理」が見てとれる。
この問題は、今年3月の「規制仕分け」で取り上げられ、「全量委託の例外拡大を検討」という結果になった。おいしい牛乳を飲みたい消費者からすると、「例外拡大」という部分修正でなく、腕のいい酪農家は自由に出荷先を選べるようにすればいい。しかし、案の定と言うべきか、その後役所では、「例外拡大」さえ「検討」している気配はない。
※SAPIO 2011年7月20日号