自動車評論家で『間違いだらけのクルマ選び』著者の徳大寺有恒氏は、若者のクルマ離れの理由には、日本のメーカーが「愛着ある一台」を作ってこなかったからだという。そんななか、目覚ましい躍進を遂げている韓国やインド、中国などの新興国メーカーと、日本メーカーがどう戦うべきかを話してくれた。
* * *
安さではもう太刀打ちできない。現実にアジア車には、日本車の半値というのもある。もちろん品質という武器は健在だけど、アジア市場は安さを優先しているのが現状だ。そうなると、日本車ならではの価値のあるクルマが必要になってくる。
怖いのは韓国車より、むしろ中国車だろうな。今や中国は日本に代わって生産台数世界一。あの国は高級車からモノマネコピーまで何でもアリだ。しばらくは国内だけで手一杯だろうけど、いずれ世界進出に打って出てくる。
僕はそのとき、強い存在になるのが中国製の高級車だと睨んでいる。ロールズやベントレー、アストン・マーチン、メルツェデスといった欧州車の牙城に中国車が食い込んできそうだ。この分野のクルマには独自の文明や文化のバックボーンが必要だからね。よくいわれることだけど“最後の戦い”は間近い。日本車はそれまでに、迎撃だけでなく攻撃の態勢を整えておかなきゃいけない。
※週刊ポスト2011年7月15日号