日本の政界の人材不足・リーダーシップの欠如はあまりにも顕著だが、ただ呆れていても仕方がない。今の震災後の難局を乗り切れるかどうかに、日本という国家の命運がかかっていると言っても過言ではない。次のリーダーにはどんな資質が求められるのか? 大前研一氏が解説する。
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日本の政治家にリーダーシップが欠如している主因の1つは、低レベルなマスコミだ。将来、首相候補になりそうな有力政治家には、新聞・テレビ各社の政治部の「番記者」が張り付き、自宅や議員宿舎、密談する料亭の前などで待ち伏せして“密着取材”を行なっている。だが、それは国民生活を左右する「政策」について取材するためではない。
私は、かつて中曽根康弘元首相や小渕恵三元首相に呼ばれて、よく経済や外交のアドバイスをした。それで当時、表で待っている記者に陽炎のようにつきまとわれて取材攻勢を受けたが、「政策」に関心を持っている政治部記者には会ったことがない。彼らは、永田町で次は誰と誰が組むのか、誰が政権を握るのか、という「政局」にしか関心がないのである。
また、将来が有望視される政治家には、番記者が付いたあたりから頻繁に財界人のお座敷がかかるようになる。そこから先は成長がピタリと止まる。本人は財界にネットワークができて知識も豊富になったと思っているかもしれないが、実際は、毎晩のように財界人と会食しているため、勉強する時間がないからだ。
もしかすると、財界人との会話そのものが経済の勉強だと勘違いしているのかもしれない。だが、そんな他人任せの時間を過ごしていたのでは、たとえ潜在的な素質があったとしても、一国のリーダー足り得る能力や知識を身につけることはできない。
※SAPIO 2011年8月3日号