国内シェア3割と、業界でもトップのチョークメーカー・日本理化学工業(神奈川県川崎市)は、全従業員の7割を占める55人が知的障がい者で、そのうち26人が重度知的障がい者だ。同社会長の大山泰弘さん(78)は2009年、社会貢献した経営者に与えられる第7回渋沢栄一賞を受賞。同年10月には、政権交代を果たした民主党の鳩山由紀夫前首相が国会の所信表明演説で、「友愛社会のひとつの例」として、この工場を紹介してもいる。
そんな大山さんが望んでいるのは、国が障がい者の雇用を保障することだ。
「私を含め、健常者はたんに障がい者の面倒を見ることが福祉だと思いがちだけれど、それは思い違いです。人のために働くことで心が豊かになる。心の幸せがあってこその福祉なのです。しかも日本国憲法には、すべての国民は勤労の義務を負うとあります。働く場所を提供することが国や企業の使命なのです」
社会で働けない障がい者が養護施設にはいると、その生活のためにひとりあたり年間500万円の税金が使われる。一方で中小企業に雇用させ、国が最低賃金である150万円を負担するようにすれば、ずっと合理的だという。
「これで障がい者は“働く幸せ”を得ることができ、国や中小企業も助かります。障がい者の家族の負担も減ります。まさに“四方一両得”。日本の企業の90%以上は中小企業だから、国がバックアップして特例会社をつくるべきです。川崎工場を視察された鳩山前首相は交代しましたが、国が責任を持つべきです」
※女性セブン2011年8月4日号