政府の地震調査委員会は7月11日、「東日本大震災の影響によって、三浦半島断層群での地震発生確率が高まった可能性がある」と発表した。三浦半島断層群とは、神奈川県の三浦半島にある活断層のこと。
同委員会は、今年1月の段階では、三浦半島断層群でマグニチュード6.6程度の地震が30年以内に起こる確率は「6~11%」と見積もっていた。今回、具体的な数字こそ発表しなかったが、その発生確率がさらに高まったというのだ。『活断層』(岩波新書)の著書がある東京大学名誉教授の松田時彦氏はいう。
「三浦半島には活断層が何本もあることが確認されていて、それがずれると直下型の地震が起こります」
同委員会によると、三浦半島断層群地震で推定される震度は、三浦半島に位置する横須賀市や三浦市などに加え、鎌倉市や藤沢市、横浜市の一部でも震度6強。東京でも大田区は震度6弱の揺れに襲われる可能性があるという。震度6強は、立って動くことができないほどで、地面には大きな地割れが生じることもあるという。
その被害はどれほどのものになるのか。神奈川県では2009年に、三浦半島断層群地震が起きた場合の被害のシミュレーションを発表している。季節は冬、平日の夕方6時、マグニチュードは7.2という想定だ。それによると、
死者:4350人
負傷者:3万5800人
全壊:25万40棟
出火件数:480件
帰宅難民:77万人
東日本大震災では津波による被害が甚大だったが、三浦半島断層群地震ではどうなのか。東京大学名誉教授の笠原順三氏がこう説明する。
「震源が陸地にあれば津波の心配はありませんが、震源の一部が海底にあれば津波は起きます。ただし、断層の横ズレによる上下変動は非常に小さいので、津波が起きたとしても最大で1.5m程度でしょう」
津波は大きくなさそうだからといって安心はできない。笠原氏が続ける。
「震源が浅い直下型は、短周期の振動を起こします。この振動は建物の倒壊を起こしやすいんです。さらに、三浦半島で地震が起きれば、鉄道は大きな被害を受け、東海道線や新幹線は、線路が破壊されてしまいます。復旧には3か月から半年くらいはかかるのではないでしょうか」
直線で50kmほどしか離れていない東京もかなりの被害を受ける。東日本大震災では、東京は死者7人、負傷者113人だったが…。
「三浦半島でM7を超える地震が起きると、それを超える被害が局所的に出る場合があります。家屋の倒壊に加えて、地震が起きる時間帯によっては火災も起きる。神奈川に近い大田区やお台場あたりでは、仮定ですが、死者数百人規模になるかもしれません」(前出・笠原氏)
※女性セブン2011年8月4日号