この7月からの電力使用制限令で、首都圏の鉄道各社には平日の12時~15時の使用電力を15%削減することが義務づけられている。そのため、山手線や常磐線(快速)、埼京線まで、12時~15時の間、5~15%本数を削減するという。また、成田エクスプレスは東電から電力供給を受けている路線を通るが、震災前の1日27往復を17往復にまで減らしている。そうした事態に、大きな疑問を呈するのが、獨協大学教授の森永卓郎氏である。
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運賃の中には、ダイヤ通りに鉄道が運行され、客車内は快適な温度に保たれ、駅をエスカレーターやエレベーターで移動できるといったサービスも含まれているわけで、料金据え置きでサービスが低下するのだから実質的には値上げである。
そのうえ余剰電力を東電に売って儲けるというのだ。こんな客を馬鹿にした話があるだろうか。
山手線というのは日本経済を支えるもっとも重要な基幹路線である。成田エクスプレスも、日本の玄関口である成田空港と首都・東京を結ぶ路線であり、3分の1もカットしたままでいいわけがない。
こういう間引きをすれば、他の鉄道会社も同様に間引き運転を行なうため、乗り換えがうまくいかなくなり、移動時間が大幅に延びることになる。そうなると、たとえば1日10社回っていた営業担当者は、7社や8社しか回れなくなり、業務の効率が著しく落ちる。じわじわと日本経済の首を締め上げていくのである。
※SAPIO 2011年8月3日号