台風一過、待望の夏休みシーズン突入!……というわけで思い出すのが小学校時代の夏休みの自由研究だが、いま「大人の自由研究」が話題になっている。どこにでもあるもので手軽に科学の威力を実感でき、しかも子供に「すごい!」といわせる優れもの。その中のひとつとして、『大人のワクワク実験 アウトドア編』(小学館)にも収録されている「隣の放射線ウオッチング」にチャレンジしてみよう。連日連夜、「放射線量」が世間を騒がせている。そんな目に見えない物体を、人工霧を駆使して、自宅で大胆にも観察してしまおうという実験だ!
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ところで冒頭から大いなる疑問なのだが、目に見えない「放射線」をどうやって見るのだろうか? 『大人のワクワク実験』の著者で東京学芸大学附属高校教諭の岩藤英司先生は、「まず、目に見えない放射線を見えるようにする装置『霧箱』を作ります。簡単ではありませんが、中学生以上でしたら十分作ることが可能だと思います」という。
【材料】
■プラスティック製容器■ドライアイス■エタノール■黒いビニールテープ■黒いアルミ板■スポンジテープ(隙間テープ)■LED懐中電灯■ランタンのマントル(ランタンを発光させるために必要な化学繊維でできた袋)■スポイト■軍手■クリップ■金槌■新聞紙■はさみ■透明なボウル
【実験方法】
【1】まずは観察用「霧箱」をつくる。プラスティック製容器の底の部分、縁の内側に沿って隙間テープを貼っていく。
【2】容器の円形に沿って、黒いアルミ板をハサミで切り抜く。
【3】切り抜いたアルミ板の中央に、90度に曲げたクリップを黒いビニールテープで貼りつける。
【4】ランタンのマントルを2cm四方に切り取り、【3】のクリップに固定する。
【5】容器の周辺に貼りつけておいた隙間テープにスポイトを使ってエタノールを沁み込ませていく。
【6】切り抜いておいたアルミ板でプラスチック容器の上に蓋をする。
【7】蓋を黒いビニールテープでしっかりと留める。これで観察用装置「霧箱」は完成。
続いてドライアイス。その際はまずはさておき「軍手」を着用する。
【8】ドライアイスを新聞紙でくるみ金槌で叩いて粉々に砕く。
【9】ドライアイスの粉をボウルに敷き詰め作った「霧箱」を黒い面を下にして置く。これで「放射線」観察のセッティングは完了。
観察は暗い室内が最適。明るいと放射線は良く見えない。容器の側面からLED懐中電灯で「霧箱」を照らしてみよう。するとマントルの中心から細く延びていく何本かの白いラインが見えるはずだ。これが放射線が通った跡なのだ。
「今回の実験は、ジェット機が飛んだ後にできる、飛行機雲と同じ原理を利用しています。放射線は目に見えません。けれど飛行機雲のように、その軌跡を視認することは可能ではないか? という発想です」(前出・岩藤先生)
岩藤先生によると、「霧箱」の原理はこうだ。霧箱上部のスポンジに沁み込ませたエタノール(アルコール)が蒸発(気化)し、下層部はドライアイスでキンキンに冷やさている。その結果、霧箱の下部分にアルコールの飽和状態が出来あがる。
霧箱の中心においたマントルには「トリウム」という放射性物質が含まれる(全く人体には影響がないレベル)。マントル片から出た放射線は、容器内の空気の分子と衝突しながら進んでいく。分子は衝突した拍子に電子をはじき出し、この電子はイオンとなる。するとイオンに気体となったアルコールが集まってくる。イオンを核とした集合体――これが、飛行機雲のような霧の線として見えるのだという。
う~ん、分かったような分からないような?
とはいえ、今回の実験はかなり高度。エタノールが漏れ出したり、ドライアイスの冷やしすぎで霧が発生しないケースもある。ただ、失敗を繰り返しながら自ら工夫して遊び方を進化させていくのも「科学実験」の醍醐味。エタノールとドライアイスの取り扱いには十分注意して、根気よくチャレンジしてほしい。
撮影■太田真三