総務省が推進する地デジ化がいよいよ7月24日に施行される。テレビCMなどでは懸命に地デジ切換えへの対応が喧伝されているが、地デジ化された世帯にも悲劇が待っている。
前号で触れたが、徳島や佐賀など民放局が1つしかない県では、5~10チャンネルを視聴できた世帯が、地デジ化後はNHK(総合・教育)と地元局の3番組だけになる。これまでと同じ番組数を見ようとすれば、ケーブルテレビに加入するしかないが、徳島県では月額で最低でも1260円の利用料に加え、宅内工事費などで最初に2万~3万円もの出費を迫られる。そのため、年金生活者の多くはケーブル加入を見送っているという。
「地デジへ切り替えたところ、地域密着のローカル番組が見られなくなった。テレビを見る時間が減って外を出歩くようになったのはいいのだが、いったい何のための地デジ化だったのか……」(徳島県在住70代女性)
推計で全国に30数万人いる視覚障害者にも、深刻な事態をもたらしている。アナログからデジタル放送に移行することによって、FMラジオによるテレビ放送の音声受信ができなくなるからである。「全日本視覚障害者協議会」の山城完治・総務局長がいう。
「安くて操作しやすい携帯用FMラジオは、視覚障害者にとって体の一部。台所や寝室に置いて、昼夜のわからない者にとっては時計代わりになっている。地デジ化は視覚障害者をテレビから置き去りにする非情な政策です」
※週刊ポスト2011年8月5日号