原発の再稼働を巡り、政府の迷走が続いている。だが実は、菅直人首相がストレステスト(安全性検査)を打ち出したり、九州電力の「やらせメール」問題が発覚したりしなくても、再稼働には黄信号が灯っていた。大前研一氏が解説する。
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30キロメートル圏まで避難地域となった福島第一原発の影響で、地元自治体だけのゴーサインでは、おいそれと前に進めない状況になっている。
自治体のほうも身動きが取れない。安易に再稼働を認めたら住民から批判を浴びるだろうし、リコール運動の対象にもなりかねず、首長としては極めてリスクが高いからだ。
しかも、福島第一原発事故以降、世界の反原発運動の人たちは、日本の脱原発を一つの指針とし、国境を越えてグローバルに連携するようになっている。今後は反捕鯨運動と同じように日本が反原発運動のターゲットになり、再稼働を認めた自治体には世界中から反原発活動家が雲霞のごとく押し寄せてくることも予想される。
そうなれば原発は「普天間化」し、おそらく再稼働できる原発はわずかで、来年3月までに全国54基の大半が停止に追い込まれるだろう。
※週刊ポスト2011年8月5日号