東北の誇り高き魂をもう一度奮い立たせ、まだまだ続くこの試練の時を乗り越えるために――。東北人の不屈の魂を表す6つの祭が初めて、ひとつになった「東北六魂祭」(7月16日~17日・宮城県仙台市にて)。36万人を感動させた情熱的な舞いと、8月に各地で本番を迎える祭りの裏舞台とは。
同祭では、8月の本祭りを前に青森のねぶた祭や秋田の竿燈まつりなどが夢の共演を果たし、2日間の見物客は予想の10万人をはるかに超える36万人。東北学院大学の政岡伸洋教授が解説する。
「東北地方の祭りは歴史あるものばかりですが、観光客誘致のために見物客が参加しやすい形にしたり、見た目に美しい派手さを取り入れたりと運営側が努力をしてきた。伝統を大事にしながらも伝統に縛られることなく柔軟に時代に合わせてきた東北人の知恵の結晶が、これらのお祭りなのです」
だが、被災地を抱える3県は今年の開催が危ぶまれていた。仙台の七夕まつりは予算を約45%削減。毎年、飾りの7割近くを作る鳴海屋紙商事は社屋が被災した。行方不明になった従業員もいるが、「どうしても開催したい」という思いで現在も作業を続けている。
岩手の盛岡さんさ踊りには被災地からも参加者がかけつける。
「津波で街が壊滅状態となった沿岸部の山田町の方々が30人の団体で参加を表明しています。本来、団体での参加は50人以上という規則がありますが、特例として認めました」(実行委員会)
6月初旬まで開催が議論されていたのが、福島のわらじまつり。
「うちは震災と原発問題を抱えていて、他県とは状況が異なります。最終的に『祭りを行なうこと自体が復興への第一歩』ということで開催を決めました」(実行委員会)
祭りに毎年、子供たちを出場させている『波恵ダンス・カルチャーパーク』の石山波恵代表が話す。
「震災で福島を離れる子が多く、生徒は2割減りました。東北六魂祭に出ても、本祭には出ない子もいます。『放射能が飛び交う福島では子供を外で踊らせたくない』という親御さんの意向からです。そんな状況ですが、子供たちは祭りで踊れる喜びを感じてくれるでしょう。元気な踊りを披露して、県外に避難した方に『福島は大丈夫。いつでも戻ってきて』と伝えることができればいいですね」
この夏、復興を祈願した祭りが被災地の魂を慰める。
撮影■本誌・東北六魂祭取材班
※週刊ポスト2011年8月5日号