毎朝、出かける前に鏡の前に立つ。鼻毛、寝癖、シャツのシワなどを入念にチェックし、そして自然な香りのコロンをつける。
サッカー日本女子代表の佐々木則夫監督(53)の日課だ。なでしこジャパンを世界の頂点にまで押し上げた佐々木氏だが、正直、現役時代は一流と呼べるスター選手ではなかった。日本リーグの2部(現在のJ2)でプレーし、1991年に引退。
その後は指導者として、J1・大宮アルディージャの監督などを経て2007年12月に女子日本代表監督に就任した。 「無名選手で代表経験もない人が代表監督を務めるのは異例ですが、かえってそれがよかった」と、あるサッカー協会関係者はいう。
そんな佐々木氏が選手の心を掴んでいるのは、妻の淳子さんのアドバイスが大きいという。淳子さんとは、1983年に結婚。ひとり娘も一時はプロサッカー選手だった。
冒頭の“お出かけ前チェック”は、「どんなに仕事ができる人でも鼻毛ひとつ出ているだけで女性社員の信頼と尊敬は減ってしまう」と淳子さんにいわれ、日課になった。
グループリーグのメキシコ戦でのこと。日本で観戦中の淳子さんは、試合後、佐々木氏にこんな電話をかけたという。佐々木氏の著書『なでしこ力』(講談社)の構成を務め、ワールドカップの初戦から密着取材を続けていたライターの江橋よしのり氏はこう語る。
「佐々木監督が相手の監督と握手をするとき、お辞儀を何回もしていたんです。淳子さんはそれを見て、“外国人がそんなペコペコした姿を見たら、みっともないと思うからやめなさい”といったそうです。身だしなみや立ち居振るまいを監督に助言するのは、淳子さんの役目なんです」
選手の心を掴んだ世界一の佐々木氏の陰には、“世界一の妻の力”があった。
※女性セブン2011年8月4日号