日本の政界の人材不足・リーダーシップの欠如はあまりにも顕著だが、ただ呆れていても仕方がない。今の震災後の難局を乗り切れるかどうかに、日本という国家の命運がかかっていると言っても過言ではない。リーダーシップの欠如を補うにはどのような制度を作るべきなのか、大前研一氏が提言する。
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現実問題として当座の難局をどう乗り越えるのか? 私はタンデム(2頭立て)かトロイカ(3頭立て)の複数指導体制でいくしかないと思う。
実は、海外にはタンデム体制やトロイカ体制でうまく回っている国が多い。たとえば、イギリスはキャメロン首相とクレッグ副首相の2トップが1つのチームとして円滑に機能している。ロシアも主として内政はプーチン首相、外交はメドベージェフ大統領という役割分担によって安定感が増している。目立たないがラブロフ外相も有能だ。
アメリカも、バイデン副大統領はともかく、オバマ大統領とクリントン国務長官のタッグによってグローバルな影響力を維持している。日本も首相以外に副首相などを置く2トップ、もしくは3トップのフォーメーションにして、しばらく凌ぐしかないだろう。
そして最終的には、首相選びの方法を現在の議院内閣制から国民の直接投票に制度変更すべきだと思う。いわゆる「首相公選制」である。日本最後の宰相と私が思っている中曽根元首相も、若い頃には「首相を選挙で選ぼう」という立て看板を全国至る所に立てていたが、政治家の中からそうした議論が出てきてもおかしくない。
公選が難しければ、「政権担当資格」という考え方を導入することを提案したい。そのルールはこうだ。原則として首相は、第一党の総選挙を戦った時の党首に限定する。もし第一党が組閣できなければ、第二党の党首を中心に連立を組んで組閣する。4年間の任期中に首相を代える場合は、その候補者の就任について、国民投票による承認を必要条件とする。
そして、その期間内に代えられる首相は1人のみ。3人目にしたら「スリーアウト・チェンジ」で自動的に解散総選挙となる。4年以内に3人目を出さざるを得なかった当該政権政党は、たとえ第一党になっても政権は1回お休み、ということにする。
このシステムなら、有権者は第一党の党首が首相になることを前提に投票できるから、選んだ覚えのない人が次々と首相になることはないし、1回の総選挙で首相が3人も4人も代わることもない。
ただし、いずれにしてもリーダーシップのある首相が登場するには時間がかかる。それまでに日本が崩壊しないことを祈るばかりだ。
※SAPIO 2011年8月3日号