『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの医療支援を94回行なって、その現実を見てきた経験から、被災地福島を支援している。以下は、その鎌田氏による被災地の報告である。
* * *
僕が代表を務める日本チェルノブイリ連帯基金では、フクシマに年間50個のフィルムバッジを貸し出し始めた。フィルムバッジは、作業中に被ばくする放射線を連続してモニターし、記録できる蓄積線量計だ。
まだ始まったばかりだが、3人家族につけてもらったところ、放射線量は、両親よりも6歳の子どものほうが高かった。子どもは、外で遊ぶので高かったと推測される。今後は遊ぶ場所の空間線量や土壌の線量を測って、お母さんがたにアドバイスしていこうと思っている。
生後3週間の赤ちゃんがいる家庭でもフィルムバッジをつけてもらった。すると赤ちゃんの年間の被ばく量は、6ミリシーベルトから8ミリシーベルトに達するという推定が出てきた。
家庭内の調査をしてみると、赤ちゃんの寝ているベッドの付近の放射線量が高かったことが分かった。この調査に協力してくれている南相馬の医師は、調査のデータを踏まえて、赤ちゃんのベッドの位置を変えるようにと指示を出した。これで被ばく量を3分の1ぐらいに下げられる可能性がある。
さらに50個の空間線量計を家庭の主婦を中心に貸し出す。自分たちの町のどこの地区の線量が高いかを測って、放射線マップを作る。そのデータを共有し合って、自らの身を守るしかないと思う。
※週刊ポスト2011年8月5日号